HUSKING BEE @ 渋谷クラブクアトロ

HUSKING BEE @ 渋谷クラブクアトロ - All pics by 山川哲矢All pics by 山川哲矢
『SOMA』release tour 2013 Extra

実に9年ぶりのアルバム『SOMA』を引っさげて全国を巡ってきたHUSKING BEE。そのエクストラショーとしてブッキングされたこの夜の渋谷クラブクアトロ公演は、直前に“どんどん”こと平林一哉が戦線離脱せざるを得ず、急遽、残りのメンバー3人で挑むこととなった。手負いのハスキンを激励するように、オープニングからアグレッシブな熱演を見せたのはゲストアクトのNOSHOW! そう、BACK DROP BOMBの白川貴善、ASPARAGUSのナオウ(原直央)とシノッピ(渡邊忍)、そして片山豊(SLIME BALL、FINE LINES、ex.THUMB)から成るプロジェクトで、始動13年にして総ライブ本数が20本に満たないという、その存在がほとんど都市伝説化していたスーパー・バンドだ。片山を新ドラマーに迎えた新体制ではまた2度目のステージながら、「Can't Say」「She's My Ex」など敬愛するALLの疾走感溢れるカバーで客席を沸かせ、「リーダー(ナオウ)が作った新曲……今日初出しの新曲やってもいいッスか!?」とシノッピが呼びかけてニューソングも披露! SHORT CIRCUIT時代から変わらぬナオウのメロディメイカーっぷりが存分に発揮されたナンバーにフロアも即座に沸騰。吠えるような白川の力強いボーカル、どこまでもメロディアスかつシャープなシノッピのギター、片山とナオウの歯切れ良いグルーブと、それぞれにキャリア豊富なメンバーとあって安定感/躍動感ともにバツグン。およそサイドプロジェクトらしからぬ卓抜したアクトを繰り広げて主役にバトンを継いだNOSHOWだった。「こうやって新曲も作ってるってことは……期待しててください!」(シノッピ)とのMCもあったので、今後のコンスタントな活動に期待!

HUSKING BEE @ 渋谷クラブクアトロ
そして午後8時20分、大歓声のなかHUSKING BEEがオンステージ。ステージ中央より少し右手に陣取ったイッソンが「HUSKING BEEはじめます! 今日は3人だけど、精一杯やらせてもらいます!」と開口一番に呼びかけ、アルバム『SOMA』同様に「Art Of Myself」「Put On Fresh Paint」と熱のこもったプレイで畳み掛け、「Life」「Anchor」など往年のナンバーでも盛大なモッシュ&ダイブを巻き起こす(熱狂のあまり靴を紛失するお客さんも!)。序盤こそ平林の不在がいささか寂しく感じられたものの、3人のアンサンブルには窮地を転覆せんとする並々ならぬ気合いと、その状況すら楽しんでしまおうという吹っ切れた爽快感もあって、聴き手を丸ごと熱狂の果てへと引き連れていった。中でもイッソンの歌声は最短距離でこちらに届いてくるようで、まるで全身が拡声器と化したようだった。

中盤に差し掛かったあたりで「やっと変な緊張が取れたな(笑)」とイッソンが本音を漏らしていたとおり、やはりプレッシャーはあったようだが、徐々に3人のヴァイブスもフランクなものとなり、「(山崎と岸野に向かって)君ら2人はすぐ黙ってラーメン食いに行くよね? 帰って来たらニンニクの臭いがして、これは行ったなと(笑)」(イッソン)と今回のツアーを振り返ったり、大きな体躯に似合わずボソボソと小声で話す岸野に、「あのね、俺の2倍くらいあるんだから!(怒)」(イッソン)と公開ダメ出しする場面も(笑)。後半は「じゃあ、ここでキーボード、シモリョー(the chef cooks me)よろしくお願いします!」(イッソン)と『SOMA』のレコーディングにも参加した盟友を呼び込んで4人編成でプレイ。温かなオルガンの音色と共に「暖願コントロール」を高らかに奏で(イッソン vs バンドによる力強い掛け合いも!)、続けて即興の「Hey Jude」から「The Sun And The Moon」へと繋ぎ、青春がまさに絶頂を迎えたような無上の昂揚感に、フロアには無数のコブシが突き上がった。

HUSKING BEE @ 渋谷クラブクアトロ
終盤はさらにギアを上げ、「The Steady-State Theory」では「まだまだそんなもんじゃねーだろ!」と熱烈にアジテート。イッソンは飛び上がってギターを掻き鳴らし、山崎はフルスロットルのドラミングでこの日一番と言えるハイライトを立ち上げた。「渋谷に新しい風を!」と続けざまに「新利の風」へと雪崩れ込むも、直後にイッソンのギター弦がプッツン! 弦を張りかえる間にはイッソンのモノマネショーが繰り広げられ、「Stay Dream」なる長渕風の即興曲には場内爆笑。アンコールでは、「本当は2曲の予定だったんですが、ありがとうの気持ちを込めて一曲増やします!」(イッソン)と「A Single Word」、さらに「8.6」と立て続けにプレイ。再び沸き立つような熱狂を生み出し、「こういう状況下で支えてくれたスタッフ、そしてNOSHOW、何より来てくださったみなさん、ありがとうございます」と心からの感謝を表明。そして「最後、気合い入れて歌うわ!」と最終曲「Walk」ではクアトロ一丸の大合唱を巻き起こして大団円! ステージ前で喝采に応え、「やれる限りやりますんで、また会いましょう!」(山崎)と決意を届けた3人。万全とはいえない状況だからこそ、いつも以上に全霊のプレイと心意気で“ハスキンであること”を全うした、どこまでも実直なアクトだった。(奥村明裕)
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