all pics by 柴田恵理5月にメジャー・デビューを果たし、ただいま追い風ムード真っ只中のWHITE ASH。彼ら初の主催イベント「HATTRIX」は、そんなバンドの現在の勢いと、ライヴバンドとしてはもとよりエンタテインメントバンドとしても大きな可能性を秘めた彼らのポテンシャルに圧倒された、パワフルな時間だった。インディー最後のワンマンでは、「新しいオモチャを手に入れたような気持ちで、インディー時代にできなかったお遊びで皆をもっと楽しませていきたい」と、メジャーに乗り出す意気込みを語っていたフロントマン・のび太(レポートはこちら→
http://ro69.jp/live/detail/80830)。その言葉通り、Hermann H.& The Pacemakersをゲストに迎えて行われた一夜限りの宴には、彼らの無邪気な遊び心とメジャー・シーンに打って出んとする意気込みが、ここぞとばかりに爆発していたのだ。
イベントに先駆けて「HATTRIX開幕直前、緊急特番」と題した動画も公開し、イベントにかける意気込みを露わにしていた彼ら。その思いはライヴ当日にも溢れていて、客入りSEとしてサッカーのサポーターソングが流れる場内には、さながらサッカースタジアムのような熱気が満ちている。15日に髭を迎えて行われる大阪公演を控えているので詳細は明かせないが、ステージセットにも大きな仕掛けが。事前の告知通りヘルマンとの「PK対決」もイベント中に実施され、それを81.3FM J-WAVEの人気ラジオ番組『TOKYO REAK-EYES』のナビゲーター藤田琢己が実況するという手の込みようである。青のサッカーユニフォームで登場したメンバーに至っては、初めてイベントのホストを務めることへの気負いや緊張感は微塵もない様子。湯水のように湧き出るアイデアを臆することなく形にし、オーディエンスだけでなく自分たちもこの場を全身で楽しもうとするのび太の姿には、根っからのエンタテインメント精神が見え隠れしている。……と、イベントの「お遊び」部分を切り取っただけでもWHITE ASHの大物っぷりが表れていたけれど、やはり醍醐味はライヴ。かねてからファンだったというヘルマンに真っ向勝負をかけた、スリリングな対バンだった。


先攻は、今年3月にベスト・アルバムをリリースし、05年3月の活動休止宣言から実に8年ぶりの本格復帰を果たしたHermann H.& The Pacemakers。“東京湾”などアグレッシヴなナンバーを冒頭から連打して、フロアの空気を沸騰させていく。なにより岡本洋平(Vo・G)/平床政治(G・Cho)のオリジナル・メンバーに、山下壮(G/LUNKHEAD)/TOMOTOMO club(B/THE BEACHES)/マシータ(Dr/ex.BEAT CRUSADERS)、そして溝田志穂(Key・Cho)の産休期間中サポートを務めるr.u.ko(細萱あゆ子/THE BEACHES)を加えた6人編成で放たれるサウンドの威力が凄い。そこにウルフこと岩井悠樹(Wolf)のアジテートと厚みのあるコーラスが加わって、放火魔か愉快犯のような不敵さで場内に荒々しい狂騒感を吹かせていくさまには、長い沈黙期間を経た今もなお「時代に鋭い刃を突きつけるバンド」としての攻撃性に満ち溢れたヘルマンの唯一無二の存在感が、ありありと滲んでいた。“言葉の果てに雨が降る”などの歌ものでは、聴く者の心にじんわりと沁み入るセンチメンタルなメロディと言葉が炸裂。さらに新曲“OEM”“Mr.Memento”ではポップかつ技巧に富んだアンサンブルを爆走させ、新章に突入したバンドのポジティヴなムードを高らかに提示してくれた彼ら。最後にウルフラッグ(バンド名が記された団旗)を振り回し、ステージを意気揚々と練り歩くウルフの姿が、ライヴの充実度を何よりも物語っていた。


そして後攻・WHITE ASHの登場。SEに合わせてメンバーひとりひとりが登場し、ステージ中央でお辞儀をしてポジションにつくという律儀な登場シーンとは裏腹に、冒頭から走り出したのは、場内を瞬時に闇の中へと引きずり込むようなダーティーなロックンロール。どこまでも朗々と響くのび太のヴォーカルが、その快楽的なムードを高めていく。曲の随所でブレイクを入れながら静と動を表現したり、ソロ・パートで果敢にアピールしたりしながらフロアの喝采を浴びていく山さん(G)/彩(B)/剛(Dr)の3人も、とにかく伸び伸びとプレイしている様子。インディー時代から華奢な風貌に似つかわしくない不敵なロックンロールを鳴らしてきた彼らだが、メジャー・デビューによって生まれた余裕と自信をもとに、その表現がさらに一皮剥けたといった印象だ。特に、今回は小規模な会場ということもあり、場内にうごめくエネルギー量がすごい。「歌い出せ、はじまりの合図!」というシンガロングが高らかに響きわたった“Kiddie”を筆頭に、曲ごとにオイ・コールやモッシュが沸き起こるフロアとの一体感も強固なもので、ライヴバンドとしてうなぎ上りの成長を遂げるバンドの今を鮮やかに見せつけてくれていた。
中盤では、8月21日にリリースを控えたメジャー第二弾シングル“Crowds”も披露。うねるベースの大波の上で清冽なリフとビートが駆け巡り、変拍子を多用したテクニカルなアンサンブルで濁流の中へ飛び込んでいく楽曲は、第一弾シングル“Velocity”の性急なドライヴ感とは対照的なムードを持った、WHITE ASHからの新たなる挑戦状。そのまま終盤に向けてラストスパートをかけると、アンコールではイベントにちなんだ1曲をヘルマンとともに披露して、のび太と岡本がステージ中央で熱い抱擁を交わす中、2時間半に及んだイベントは大団円を迎えた。「今日から始まったHATTRIXをどんどん続けていきたい」と、最後に力強く告げたのび太。その次の一手となる15日の髭との対バンでは、今日とはまた違った趣向でオーディエンスを楽しませてくれるはず。今後さらなる輝きとスケールを増していくだろうサウンドとともに、持ち前のエンタメ精神がいかんなく発揮されていくだろう彼らの動向を、楽しみに見守っていきたい。(齋藤美穂)