桑田佳祐「昭和八十八年度! 第二回ひとり紅白歌合戦」 @ パシフィコ横浜

桑田佳祐「昭和八十八年度! 第二回ひとり紅白歌合戦」 @ パシフィコ横浜
今年はソロ・ツアーでの年越しライヴを皮切りに、1年7ヶ月ぶりのシングル『Yin Yang/涙をぶっとばせ‼/おいしい秘密』リリース、さらに5年ぶりのサザンオールスターズ復活に伴うシングル『ピースとハイライト』リリース&スタジアムツアー「灼熱のマンピー‼ G★スポット解禁‼」の開催と、近年稀にみる大車輪の活躍を見せてきた桑田佳祐。その締め括りとなる「昭和八十八年度! 第二回ひとり紅白歌合戦」が、11月30日・12月1日・3日・4日の4日間にわたってパシフィコ横浜・国立大ホールで開催された。エイズ啓発運動Act Against AIDS(AAA)の一環として行われる本コンサートは、古くは1930年代から現代に至るまでの名曲を、紅組/白組に分けて桑田佳祐ひとりで歌い切るという、2008年に大好評を博した同名イベントの第二弾。総合司会「甘皮静夫」に扮した桑田のオープニング映像に始まり、「本家」さながらに“歓喜の歌”の大合唱で幕を閉じた大ラスに至るまで、全56曲・4時間弱に及ぶアクトの隅々に極上の歌心とサービス精神とメッセージが凝縮された、最高のステージだった。

藤山一郎“東京ラプソディ”、高峰秀子“銀座カンカン娘”から幕を開けたステージは、その後コーナーごとにテーマ立てて展開。「GS・ビート歌謡対決」「フォーク・ソングからニュー・ミュージック対決」「バブルからの贈り物…対決」「昭和歌謡大ヒットメドレー対決」と年代別に釘打って、ザ・タイガース“銀河のロマンス”、イルカ“なごり雪”、尾崎豊“I LOVE YOU”、高橋真梨子“桃色吐息”、西郷輝彦“星のフラメンコ”、由紀さおり“手紙”、西城秀樹“傷だらけのローラ”……とあらゆるタイプの楽曲を縦横無尽に歌い上げていく。「今回のために200曲ほどリストアップして聴いたら、今まで知らなかった名曲も沢山あって。最初(セットリストが)100曲ぐらいになって収拾がつかなかった」と桑田も言っていた通り、押しも押されぬ名曲の連続。80年代生まれの筆者にとっても、戦後の日本歌謡の輝かしい軌跡を見せつけるようなセットリストは、それだけで興奮を禁じ得ないものだった。が、そんな中でも胸を打ったのは、わずかなMCを挟むのみで、ほぼノンストップ&ステージ出ずっぱりで歌を届けていく桑田の姿。まるで自身の曲のようにすべての歌を情感たっぷりに歌い上げ、観客の心を震わせていく彼のヴォーカリゼーションは、そっくりそのまま「日本歌謡の奇跡」と呼んでしまいたくなるほどの、圧倒的なパワーを持っていた。

それだけでなく、日本きってのエンターテイナーぶりを見せつける、遊び心あふれる仕掛けも満載。“東京砂漠”では、桑田が内山田洋とクール・ファイブのメンバー全員になり切った映像で笑いを取ったかと思いきや、ドリフ・メドレーでは、なんとサザンオールスターズのメンバーがドリフに扮して登場! その後の平原綾香“Jupiter”では、すべての客席に事前に配布されていたサイリウムが一斉に点灯し、ピンクや赤のレーザー光線が飛び交う場内は瞬時に宇宙空間へと誘われる。さらにaiko“カブトムシ”、奥田民生“イージュー★ライダー”などで構成された「やっぱり現役も負けてられないよね‼ 対決」を経て、「ロックスター対決」の沢田研二“TOKIO”では、パラシュートを背負った桑田が空中遊泳を披露! そのまま小泉今日子“なんてったってアイドル”vs郷ひろみ“男の子女の子”の「スーパーアイドル対決」、山本リンダ“どうにもとまらない”vsレディー・ガガ“Born This Way”の「R-15指定! 愛と欲望の守護神対決」で本編ラストを迎えるまで、ユーモアもエロスもすべてが歓喜となって押し寄せる極彩色のステージで、完全無欠のエンターテインメント・ショウを完遂させたのであった。

桑田佳祐「昭和八十八年度! 第二回ひとり紅白歌合戦」 @ パシフィコ横浜
アンコールでは、まずは佐野元春“SOMEDAY”、Le Couple“ひだまりの詩”をしっとりと歌い上げ、「今年も偉大な先人がお亡くなりになりました」というMCから、“アンパンマンのマーチ”と島倉千代子“愛のさざなみ”を披露。そして北島三郎“帰ろかな”で白組トリを務めると、紅組トリの美空ひばり“川の流れのように”では、高さ6メートル×幅15メートルという、小林幸子ばりにド派手な衣装で登場。さらに「性別を超えた存在」として、和田アキ子もとい和田アキ男の“笑って許して”を大トリで披露して、大爆笑の幕切れに。最後はバックバンド、ダンサー、さらにはサザンのメンバーら出演者全員を呼び込んでの“歓喜の歌”の大合唱で、4時間弱に及ぶステージは大団円を迎えた。

80年以上も前の曲から現在の曲に至るまで、そのすべてを「今の時代に響く歌」として届けたこと。実に50曲以上にも及ぶ長丁場を、4日間にわたってひとりで務め上げたこと。映像、ダンサー、舞台美術、特攻などあらゆる要素を駆使して、濃密かつハイレベルなショウを創り上げたこと……そのすべてが破格だし、それを闘病生活を送っていた桑田佳祐が行っていると思うと、改めて感服する。何より素晴らしいのは、Act Against AIDSのコンサートでありながら、それでもアイデアとユーモアの限りを尽くして届けられる桑田の歌とパフォーマンスは、それだけで人々の心を元気にし、未来への前向きな一歩を踏み出させる圧倒的な力を持っている。改めて稀有な存在だと思うし、来年以降もさまざまな手法で我々を元気にしてほしい。そんな想いに胸が躍った一夜だった。(齋藤美穂)

セットリスト
1. 東京ラプソディ
2. 銀座カンカン娘
3. 銀河のロマンス
4. 虹色の湖
5. スワンの涙
6. 涙の季節
7. 小さなスナック
8. 涙のかわくまで
9. エメラルドの伝説
10. 京都の恋
11. 若者たち
12. この広い野原いっぱい
13. 風
14. なごり雪
15. 22才の別れ
16. わかれうた
17. I LOVE YOU
18. 恋におちて –Fall in love-
19. リバーサイドホテル
20. 桃色吐息
21. 遠く遠く
22. 春よ、来い
23. グッドナイトベイビー
24. 小指の想い出
25. 星のフラメンコ
26. 太陽がくれた季節
27. 傷だらけのローラ
28. 手紙
29. 港町ブルース
30. 恋の奴隷
31. シクラメンのかほり
32. みずいろの手紙
33. 東京砂漠~おいしい秘密
34. 北の宿から
35. 見上げてごらん夜の星を
36. 喝采
37. ドリフ・メドレー
38. Jupiter
39. カブトムシ
40. ありがとう
41. イージュー★ライダー
42. やさしくなりたい
43. 六本木心中
44. TOKIO
45. なんてったってアイドル
46. 男の子女の子
47. どうにもとまらない
48. Born This Way~東京五輪音頭~Born This Way
アンコール
49. SOMEDAY
50. ひだまりの詩
51. アンパンマンのマーチ
52. 愛のさざなみ
53. 帰ろかな
54. 川の流れのように
55. 笑って許して
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