ROCKIN’ ON JAPAN 2013年9月号の特集記事『JAPAN’S NEXT 2013』。コンピレーションCD付きのこの特集は、これからのシーンを担う新世代バンドに熱い視線を注ぐ内容で、現在発売中の2014年2月号(http://ro69.jp/product/magazine/detail/94667)においても『JAPAN’S NEXT 2013→2014』として第2弾が展開されている。その特集記事と連動するライヴ・イヴェントが、第1回の開催を迎えた。前説に登場したROCKIN’ ON JAPAN編集長・山崎洋一郎は「一回目の参加者である皆さんは、いわば共犯者です!」「ライヴで観て貰えれば、もっと伝わる。新世代を知っている若い人達だけじゃなくて、それをまだ知らない年上の世代にもアピールしたい」と、誌面記事・コンピCD・ライヴという立体的なメッセージとして繰り広げられる『JAPAN’S NEXT』の意図を説明していた。2013年9月号の特集に登場したバンドが4組、現在発売中の2月号に登場したバンドが1組と、計5バンドが集結したイヴェント、いよいよ開演である。
●FOLKS
トップ・バッターは、北海道恵庭市出身、2013年1月に結成されたFOLKS。北海道以外でのライヴは、今回が初めてとなる。サポート・ドラマーを含め、6人編成のパフォーマンスだ。シンセ・サウンドがたなびくオープニングから滑らかにグルーヴを構築し、2月12日にリリース予定のメジャー・デビュー・ミニ・アルバム『NEWTOWN』から“Everything is alone”のふくよかであたたかいメロディと、新たな物語の始まりに触れる歌詞が届けられる。続いて岩井郁人(Vo./G.)がカウベルやスネア・ドラムを打ち鳴らしつつ煽り立てる“FOREVER”や、ブルージーなエモーションが広がるサウンドの中に岩井豪利(G./Vo.・郁人の実兄)の雄々しいリード・ヴォーカルが映える“RIVER”と、ダイナミックにパフォーマンスを繰り広げていった。岩井郁人は、現在は雪景色となっているという地元の新興住宅地に愛情を注ぎつつ、「今は、どこにいても発信できるから」と、FOLKSの活動姿勢や新作『NEWTOWN』に込めた思いを語って“Replica”に向かっていった。一部、音が出なかったり小さなトラブルがあったものの、フォーキーで芯の強いメロディが次々に溢れ、今まさに自分たちの確固たる文体が生み出されていくような、雄大なパフォーマンスであった。1月22日には下北沢GARDENで行われるライヴ・イヴェントにも出演予定だ。
●さよなら、また今度ね
PUFFY“愛のしるし”をバックに賑々しく姿を見せたのは、千葉県出身、さよなら、また今度ねの4人。“信号の奴”から何とも楽しそうに演奏へと突入し、菅原達也(Vo./G/Key.)の歌声と佐伯香織(Ba./Cho.)によるハーモニーが並走する。続いてアルバム『P.S.メモリーカード』のオープニングを飾っていた“輝くサラダ”が威勢良くプレイされ、その響きをもって4人の姿をキラキラと輝かせていった。どうということのない日常もギアをぐっとシフトして視界を切り替えることでまったく別の視界を生み出す、そんなさよ今ならではの表現世界だ。「次の世代を担うバンドたちってことで、(ギターを搔き鳴らす仕草を見せながら)俺はここにいるぞ、ここにいるぞ、とね。アピールするわけですよ。俺もその一人なわけです。よろしくお願いします!」と告げた菅原は、喝采を浴びて“踏切チック”へと傾れ込んでゆく。ナイーヴさが逆噴射したようなロック・スピリットで触れる者の胸を焦がし、或いは得も言われぬ哀愁をユーモア溢れる歌詞に紛れさせながら、“Q”ではブレスする間もないような歌詞でフックを生み出して「いい曲だねえ。歌ってて気持ちいいんだよ、この曲」とご満悦である。2月2日にShibuya eggmanで行われるワンマン公演について「良かったら、お会計してえ〜」と告知すると、更に矢継ぎ早に楽曲を連発。“僕あたしあなた君”では早口なヴォーカルにつられるように、「ハイハイハイハイハーイ」と歌声が巻き起こっていた。まんまとさよ今の術中に嵌められたしまった、そんなステージだ。
●SAKANAMON
3ピース・バンドの鮮烈極まりないパフォーマンスを繰り広げてくれたのは、2月5日にセカンド・アルバム『INSUROCK』のリリースを控えたSAKANAMON。藤森元生(Vo./G.)の歌声がぽっかりと浮かんで、そこから一気に走り出す“花色の美少女”のオープニングだ。森野光晴(Ba.)はさっそくステージの淵にまで身を乗り出してオーディエンスを煽り、急転直下にトロピカルなアンサンブルへと突入してゆくバンドを難なく支える木村浩大(Dr.)の傍らでは、サカなもん(マスコット)もステージを見守っている。ドリーミーで気怠い同期サウンドからスタートした“SAKANAMON THE WORLD”では強靭なディスコ・グルーヴが描き出されてゆくが、染み付いて消えない憂いが何とも言えない手応えを残していた。“空想イマイマシー”は、途中でKEYTALK“コースター”の一部が挿入されるという、遊び心溢れるパフォーマンスで歓声を誘う。森野は「いいんですか? 僕らなんかが新世代で」「新しいアルバムが売れないと、KEYTALKにレーベルの先輩ヅラ出来ないんで、よろしくお願いします!」と告げ、藤森は「僕たちとか、皆さんのようなつまはじき者、社会不適合者でも、束になれば力が生まれるんじゃないか、という曲です」と、YouTubeでも公開されている新曲“TOWER”を披露。果ては“ミュージックプランクトン”で盛大なシンガロングを巻き起こすなど、新世代のエネルギーをきっちりと刻み付けていた。
●KEYTALK
続いては、『JAPAN’S NEXT 2013→2014』でフィーチャーされたKEYTALKが登場。寺中友将(Vo/G.)は「明けましておめでとうございます!!」と挨拶を一発、“UNITY”を皮切りにアクロバティックなメロディが迸る。ここからまだ展開するの?というスピードに乗った旋律が首藤義勝(Vo./Ba.)の歌声で繰り出され、小野武正(G./MC/Cho.)が踊るようなギター・フレーズをぶっ放してみせる。続く“B型”は、寺中が歌う合間のブレイクに“今年もよろしくお願いします!”と改めて挨拶を挟み込んでフロアを再燃させる。4ピースのギター・バンドと言えば確かにそうなのだけれども、メンバーがそれぞれに楽器を持って新しい遊びを発見してしまったような、そういう清々しいまでニュータイプな体感が、KEYTALKのパフォーマンスにはある。楽しそうに、予測の範囲をいちいちハミ出してゆくさまが痛快だ。MCの一幕では、一緒に餃子を食べにいったSAKANAMON・木村の話題をモノマネ付きで振り撒き、2階席にいた本人から「早く曲やれよ!」と怒られている。で、この後にはなんと、3/12にリリース予定のニュー・シングル曲“パラレル”をライヴ初披露。雄々しいコーラス・ワークで現状を越えてゆく、力強いナンバーだ。寺中はちょっと緊張していたそうだが、今後のKEYTALKの快進撃を確信させてくれるステージであった。
●パスピエ
さあ今回、トリを務めるのはパスピエである。2012年にメジャー・デビュー、2013年に初のフル・アルバム『演出家出演』発表というキャリアだけなら確かに新世代なのだが、そのライヴたるや、確かなスキルに支えられた、恐るべき完成度を誇るポップ・ミュージックをやすやすと鳴らしてしまう。“とおりゃんせ”のイントロでひらひらと手を振って静かに舞い、一気に視線を奪ってしまう大胡田なつき(Vo.)を先頭にプレイされてゆく音楽はもう、鍛え抜かれた技術と蓄積された知識をもって、完璧な角度でポップの急所だけを狙い撃ちしてゆくような快感に満ちている。ライヴならではのフィジカルな手応えも素晴らしく、メンバーそれぞれに見せ場を作ってゆく点も抜かりない。“△”から“シネマ”にかけては、安心感溢れるムードのまま、オーディエンスのスウェイが広がっていた。大胡田が改めて『JAPAN’S NEXT』の趣旨を説明し、トリらしい振る舞いを見せれば、作曲面をリードする成田ハネダ(Key.)は「この音楽業界、いろんなことが起こってますけど、僕らは僕らのペースでやっていこうと思いますんで」と語る。でも、パスピエの場合、その「僕らのペース」というのが普通ではない。終盤の“S.S”で更に熱を帯びたフロアに対し、アンコールで“脳内戦争”まで披露してくれたが、まだまだ余裕、といった表情の末恐ろしいパスピエであった。4月には東名阪の自主企画『印象C』が行われる予定なので、ぜひチェックを。
なお、このライヴ・イヴェント『rockin’ on presents JAPAN’S NEXT』は、3月16日に、早くも第2回が開催されることもアナウンスされていた。出演アーティストの情報など、続報に期待していただきたい。(小池宏和)
セットリスト
●FOLKS
1 Everything is alone
2 FOREVER
3 RIVER
4 Good-bye friends
5 Replica
●さよなら、また今度ね
1 信号の奴
2 輝くサラダ
3 踏切チック
4 砂かけられちゃった
5 Q
6 瑠璃色、息白く
7 僕あたしあなた君
8 ギンビス~頭3才未満の唄~
●SAKANAMON
1 花色の美少女
2 カタハマリズム
3 SAKANAMON THE WORLD
4 空想イマイマシー
5 TOWER
6 マジックアワー
7 ミュージックプランクトン
●KEYTALK
1 UNITY
2 B型
3 コースター
4 パラレル
5 sympathy
6 fiction escape
7 太陽系リフレイン
●パスピエ
1 とおりゃんせ
2 フィーバー
3 △
4 シネマ
5 チャイナタウン
6 S.S
7 ワールドエンド
en 脳内戦争