凄いライヴだった。英マンチェスター出身の4人組、The 1975による、昨夏のサマーソニック&原宿アストロホール以来の来日公演。僕はサマソニでその勇姿を目の当たりにしたが、その後のデビュー・アルバム『The 1975』本国チャート初登場1位を含む好評が自信に拍車をかけたのだろう。堂々とパフォーマンスを楽しみ尽くす振る舞いも、実質的なサウンドのスケール感も、飛躍的に向上していてびっくりした。会場のサイズは大きくなったのに、チケットは見事ソールド・アウトし、しかもThe 1975が放つエネルギーはハコからはみ出してしまいそうだ。彼らは間違いなく、ビッグなロック・スターの階段を駆け上がっている。そう確信するパフォーマンスであった。翌2/5の大阪・梅田クラブクアトロ公演も素晴らしいものになるだろう。参加予定の方は、以下本文のネタバレにご注意を。公演終了後に読んで頂けると嬉しいです。
東京公演のサポート・アクトとして登場したのが、英バーミンガム出身のスウィム・ディープ。こちらも昨年、『ホウェア・ザ・ヘヴン・アー・ウィー』でアルバム・デビューを果たしている。落ち着いた物腰で、キーボードのサポートを含む5人編成のパフォーマンスを切り出した。優美にしてキラキラとしたサウンドスケープが、あたたかなフラワー・ポップの時間を生み出してゆく。クイッ、クイッ、と膝を交互に曲げ伸ばしするダンスと共に歌う、フロントマンのオジーことオースティンである。演奏そのものは少し頼りない部分もあるのだけれど、それ以上に、甘い陶酔感や憂いのヴァイブに率先して浸ろうとするメンバーの姿勢が最高だ。パフォーマンスに自分で乗っかる力が高いというか。懸命にクリーンなギター・フレーズを奏で、絶妙に捩じれたベース・ラインにトライし、決して勢い一発に逃げることがない。若者の傍若無人さを映し出すアートって、実はこんなふうに、ナルシシズムと紙一重の自分自身に乗っかる力から生み出されるのではないか。7曲を披露して、まるで夢から醒めるようにフロアからわっと沸き上がる歓声が、その力を証明していた。本日2月5日にはShibuya TSUTAYA O-NESTでワンマンも行われる。
転換を経て、いよいよThe 1975のステージだ。悲鳴のような声さえ混じる歓声を受け、びっちりと髪を撫で付けたフロントマンのマシューは「TOKYO!!」と雄々しいシャウトを返す。ソリッドに打ち鳴らされるジョージのビートに乗せてまず披露されるのは、空虚な街のヴァイブを乗りこなしにゆく“The City”だ。空間系のエフェクトをたっぷりと効かせ、刺激的な波形の分厚いシンセ・サウンドも加わってオーディエンスを一息に呑み込んでゆく。軽やかにステップを踏んで右へ左へと動き回りながら歌っていたマシューがギターを手に取ると、続いてはEP『Sex』の隠しトラックだったビート・ナンバー“Milk”で沸々とした盛り上がりを生み出す展開へ。このあたりは、さすがにアルバム前のEP群から話題を攫っていたバンド。セットリストの組み方も面白い。序盤のうちはマシューがマイクやギターの出音を気にしていたようだったが、それでも勢いを殺さずに楽曲を畳み掛けてゆく。ロスがサンプラー上のシンセ・ベースも用いていた“M.O.N.E.Y.”の後半、アダム&マシューのギターとロスの生ベースが爆発的なサウンドを繰り広げてゆくさまが格好いい。
「イギリスのマンチェスターから来たThe 1975だよ。今日は来てくれてありがとう!」と手を振って挨拶するマシュー。そして彼らならではのカラフルなポップ・センスが花開いたのが“So Far (It’s Alright)”だった。個人的に前半戦のハイライトは、“Talk!”〜“She Way Out”といったダイナミックなグルーヴのナンバーを、今のThe 1975が迫力満点にプレイする一幕。このとき僕は初めて、The 1975はやはりマンチェスターのバンドなのだと実感した。バブルガム・ソウルや80年代の華やかなエレ・ポップの煌びやかなメロディ、そしてポスト・ダブステップ世代のグルーヴをもって、その視界とヴァイブをフィジカルに体験させるバンドなのだ。その歌からは若い不安や苛立ちが生々しく立ち上り、それと同じくらいダーティーな体験のスリルやセクシーな恋のときめきもありのままに詰め込まれている。こんなふうにヴィヴィッドに、英北部のある若者の生きる視界を伝えてくれるロック・バンドというのは、ひとつの優れたジャーナリズムでもあるだろう。
「アルバムを出したら、みんながこうして歌ってくれて嬉しいよ。楽しんでる?」と告げて披露されたシングル曲“Settle Down”では一際大きな歌声が巻き起こり、手を叩いて喜ぶマシュー。哀愁のシンセ・メロディと共に歌心を込めて触れる者を逃がさない“Heart Out”や、「感電しちゃうから、靴は履いてないんだよ」とオーディエンスと触れ合いつつアンビエントなサウンドスケープに誘い込む“Fallingforyou”と、逐一コミュニケーションを楽しみ、The 1975の表現のレンジを押し広げてゆくさまが素晴らしい。終盤の盛り上がりを生み出してゆく“You”をバスドラムの上に乗り上がってフィニッシュしたマシューは、「もっと曲やる? ちょっとおしゃべりしようか。ゲンキ?」とボトルを携えてご機嫌である。そして雄弁なインストゥルメント・パフォーマンスから、エフェクトを噛ませたラップ・ヴォーカルへと至る“Menswear”を経て、本編ラストは華やかに享楽性を分かち合う“Girls”。フラストレーションを溜め込んだ現代の若者も、例えばこんなふうに軽やかに享楽を楽しむことができるのだと告げるような、その姿は余りに美しいものだった。
実に練り込まれた、ドラマティックなセットリストのお陰で本編の満足感はかなりのものだったが、まだやるべき曲があるな、というわけでアンコール。壮大かつパワフルなサウンドでその思いを叩き付けるラヴ・ソング“Robbers”がまた凄かった。そしてダメ押しとばかりに“Chocolate”と“Sex”を連発してしまう。ヒット曲が、まるでボーナスみたいな扱いである。そのサウンドとメロディ、広がるシンガロングそのものが、もうこれぐらいの会場じゃ小さいよ、と主張しているような光景だった。Tシャツを脱ぎ捨てて上半身を晒し、満足げな笑顔で手を振るマシューである。彼らの成長が、今後の作品にどのように落とし込まれるのか楽しみだし、サマーソニックではより大きくなった彼らの姿が観られるはずだ。(小池宏和)
セットリスト
Swim Deep
01 Francisco
02 Honey
03 Beach Justice
04 The Sea
05 Red Lips I Know
06 She Changes The Weather
07 King City
The 1975
01 The City
02 Milk
03 M.O.N.E.Y.
04 So Far (It’s Alright)
05 Talk!
06 She Way Out
07 Head.Cars.Bending
08 Settle Down
09 Heart Out
10 Pressure
11 Fallingforyou
12 You
13 Menswear
14 Girls
encore
01 Robbers
02 Chocolate
03 Sex
The 1975 @ 赤坂ブリッツ
2014.02.04