Dragon Ash @ Zepp Tokyo

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ニューアルバム『THE FACES』を引っ提げた、3年振りの全国ツアー「Dragon Ash Tour THE SHOW MUST GO ON」。その二本目となるZepp Tokyo公演が2月7日に行われた。開演を告げるアナウンスだけで大歓声、客電が消えると大きな拍手。ニューアルバムやツアーに対する渇望感の表れだろう。人一倍熱いDragon Ashのファンの気合いが、ひしひしと伝わってくる。

開演前からステージを覆い、ロゴやエンブレムが映っていた幕に、興奮を煽ると共に、このツアーは『THE FACES』を表現するものであることを示唆する映像が流れる。間もなくメンバーのシルエットが映り、開幕宣言のような“The Show Must Go On”がスタート! さっそくクラウドサーフの波が。さらにジャンプやオイ・コールが炸裂した“Trigger”、ド頭からシンガロングを起こした“Run to the Sun”と続いていく。『THE FACES』は、ライヴで映えるアルバムだと思ってはいたが、予想以上だ。文字通り、顔と顔を突き合わせてきた同士だからこそ生み出せる阿吽の呼吸が、楽曲をさらに輝かせている。またそれは、何も激しい曲調に限ったことではない。“Neverland”や“Today’s the Day”のようなミドルチューンでもシンガロングが広がり、温度が下がることはなかった。メロディに生命力が溢れているというところも大きいのだろう。血がドクドクと体中を巡っていくような感覚さえ覚える。ほとんどMCはないが、“Here I Am”でグググッと結束が固まっていった様子などは、楽曲そのものの説得力がハンパじゃないことを何よりも証明していた。

Dragon Ash @ Zepp Tokyo
メンバーの魅せ場もちりばめられていた。『THE FACES』のインタヴューでKjは、6人にとっては処女作であり、全員が補い合ってグルーヴを作っていったと語っていたが、ステージにも、各々が自覚を持って挑んでいるように見えた。マスクを付けて危機迫るダンスを披露したATSUSHIや、Kjに「ギターソロ!」と言われて進み出たHIROKIが印象的だった“Blow Your Mind”では、特にそんなことを考えさせられた。また、アルバムではKjが弾いていたフレーズを、華麗にステージで表現したKenKenの存在も重要だった。彼をフィーチャーした“The Live”で、ここぞとばかりにキャラクターを全開にしていたところも、本当にわかっている人だなあと思わずにはいられなかった。さらに“Still Goin’ On”では、YALLA FAMILYの50Caliber、Haku the Anubiz、WEZが登場し、火を点ける。彼らがステージを降りた後に「お前ら音楽なかったらどうやって生きてるんだ、って思う奴らでしょ?」とKjは言っていたが、それはその場に居た誰にも当て嵌まる言葉じゃないだろうか。その後の“Golden Life”は、よりいっそう輝いて響いてきた。

Dragon Ash @ Zepp Tokyo
ツアーがはじまったばかりなので『THE FACES』収録曲以外の曲目はお楽しみだが、「僕らの歌」がたっぷりと盛り込まれていた。Kjはダイヴしてきたキッズと次々に拳を合わせ、「何か元気ねーな。俺、まだ全然なんだけど!」と煽り、「ミクスチャーロックは好きですか!?」と叫ぶ――血気盛んな勢いが剥き出しで伝わってきて、本当にここが彼らの居場所なんだな、と心から思えた。最後は、美しく誇り高く咲き誇った“Lily”で締め括られた。

Dragon Ash @ Zepp Tokyo
アンコールではサプライズが。再びステージにメンバーが呼び戻されると、フロアから「ハッピーバースデイ!」との声が聞こえたかと思ったら、BOTSがバースデイ・ソングを流し出す。そう、今日は桜井とATSUSHIの誕生日なのだ! ケーキが運ばれたところで、ステージど真ん中での二人の貴重な挨拶。桜井は、「バンド長いことやってるけど、当日ライヴやるのは初めて」と照れながら「あと30年ロックしていいですか!?」と宣言していた。ATSUSHIは「誕生日にこんな踊らせていただいていること、表現させていただいていることを嬉しく思います」と彼らしく謙虚な言葉。とても新鮮で、和やかな一面が垣間見られた。その後はガッツリ3曲を演奏して、颯爽と終演となった。

『THE FACES』のジャケットのマスクから連想される『オペラ座の怪人』をモチーフにしたのか、ステージにはシャンデリアやドレープ掛かった幕が飾られ、さらにスクリーンやLEDも使われていたものの、演出自体は実にシンプル。そしてツアーははじまったばかり。なのに、何度もクライマックスが訪れる感動的なライヴだった。それは、テーマに向き合ったというよりは、血肉で作ったと言える『THE FACES』によって引き出されたものであり、生き様がステージに見えたからだろう。ツアーは5月まで続き、ファイナルは彼らにとって初めての日本武道館公演となる。まだまだショウは続いていく。それがさらなるドラマを生んでいく確信が、既に沸いてきた。(高橋美穂)
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