Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - Mogwai  All pics by KAZUMICHI KOKEIMogwai All pics by KAZUMICHI KOKEI
2012年2月に初開催され、その後は年に3回(各回2日間)ペースの開催を着実に重ねてきたインディ/オルタナティヴ・ミュージックの祭典=Hostess Club Weekender(以下HCW)。丸2年の歴史を刻み、通算7度目の開催を迎えた。これまでは、恵比寿ガーデンホールやZepp DiverCityを舞台に繰り広げられてきたけれども、今回は新木場スタジオコーストへと規模を拡大。関東では前日からの大雪/強風の影響があり、交通機関には混乱が相次いで随分ハラハラとさせられたが、幸いにして初日の開場時間には明るい陽射しが降り注ぎ、当日券も完売に至ったというのだから、ポップ・ミュージック・ファンの熱意には恐れ入る。それでは、2日間の模様をそれぞれにレポートしていきたい。

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - ErrorsErrors
■Errors
現在3ピースで活動する、グラスゴー出身のエラーズ。2005年のデビュー以来、モグワイ主催のROCK ACTIONからリリースを続けている。HCWのトップ・バッターには、割と新進気鋭のアーティストがフィーチャーされる機会が多いけれども、今回は良い意味で彼らの経験が安心感をもたらしてくれるオープニングになった。カジュアルな佇まいで颯爽と楽曲を繰り出し、シンセ・サウンドのレイヤーや空間系エフェクトを噛ませたヴォーカル・マイクを駆使しつつ、右肩上がりに迫力のライヴを繰り広げては体の冷えたオーディエンスを暖めてくれる。グラスゴー・バンドらしい、チャーミングなメロディのギター・ポップだってお手の物だ。ドラマーのジェイムスはスティックをくるくると鮮やかに回しながら、独自のタイム感を込めた力強いビートでギター・ポップやダンス・ロックを支えるのだった。2/12の東京、2/13の大阪と、チャーチズに帯同する形でライヴを行ったことに触れながら「Hostess Club Weekenderの1日を楽しんでね。今日が僕らの(今回の来日で)最後のショウだよ。どうもありがとう。全部観てくれた人はいる? 観てくれたあなたはヒーローだね」と語り、短い持ち時間でありながらも、充実のパフォーマンスを届けてくれた。

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - ÁsgeirÁsgeir
■Ásgeir
デビュー・アルバムが母国アイスランドなどで幾つもの音楽賞を獲得して話題となり、2014年に入って英語ヴァージョンのアルバム『In The Silence』をリリース。個人的にも初日の注目株だったアウスゲイルが登場だ。彼自身を含め総勢5名のバンド編成で、アコースティック×2、エレクトリック×1というギターのめくるめく交錯からも、その演奏力の高さが伺える。ステージ上手側にはエレクトロニックな機材が並んでおり、フォーキーな生音とポスト・ダブステップ世代のエレクトロ感覚をごく自然に折衷する、アウスゲイルの表現スタイルを演出していた。何と言っても、そのソングライティングと、歌声の美しさが、しっかりとパフォーマンスの核を成している。アーティストとしては新人なのに、勢いよりも構築美に根ざしたパフォーマンスの頼もしさといったらない。キャッチーな“King and Cross”から音楽エネルギーの放射で浴びせかける“Torrent”というクライマックスも見事だ。かっちりとした構築美なのに息苦しくならないのは、そのフォーキーな情感ゆえだろう。英語ヴァージョンのポピュラリティを利用しつつ、母国語から立ち上る精神性や湿度といったフィーリングも大切に残している。言語とは、それ自体が個性的な音楽だと改めて思う。アルバムの初回限定盤には母国語ヴァージョンのダウンロードカードも封入されていたけれど、僕はまだダウンロードしていなかった。帰ったら早速入手してみよう。楽しみだ。

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - DaughterDaughter
■Daughter
3組目には、昨年のフジロック以来となるドーターfromロンドンのステージ。沸々と広がるギターのサウンドスケープ(イゴールは時折ボウイング奏法も駆使する)と、囁くようでありながらエモーションをたっぷりと滲ませたエレナのヴォーカル・スタイルのコントラストが映える。逃れられない宿命のように哀しみを湛えたそのロックは、緊迫感をもってオーディエンスを惹き付けるのだけれども、いざ曲間となればイゴールもエレナもフレンドリーに語りかけてくるという、緊張と弛緩のバランスも心地良いライヴになっていった。「とても古い曲だよ」と自主リリースのEPから“Candles”を披露したり、アルバム『If You Leave』のクライマックスを担っていた“Shallows”でじっくりとその物語性を発揮したり。エレナはとてもフェミニンなイメージで荒ぶることがないが、説得力という点では本当に強いエネルギーを放つヴォーカリストである。ウェットな陰鬱さがギター・サウンドに増幅され、そして辿り着くカタルシスが素晴らしい。“Youth”のイントロでは大きな歓声が沸き上がり、モグワイやアウスゲイルと並ぶブッキングにも頷ける、幽玄ノイズ・サウンドの美しいステージであった。

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - CHVRCHESCHVRCHES
■Chvrches
こちらは昨年のサマーソニック以来となる来日で、HCWに先駆けてエラーズとのライヴハウス公演も行ったチャーチズ。初っ端からファットなビートを効かせた迫力のエレ・ポップでオーディエンスを一息に呑み込んでゆくさまに驚かされてしまった。ローレン嬢の歌声も力強さを増していて、人気に支えられた自信と成長ぶりが窺えるパフォーマンスだ。ノリノリで腕を振っては歌い、「コニチハ!」と挨拶する。イアンが生ベースをブリブリと奏でて煽動する“Lungs”、キュートなヴィジュアルにぴったりのキラキラポップな“Gun”、男女コーラスの掛け合いが映える“Night Sky”と、どキャッチーでフック満載の楽曲群がスタジオコーストのサイズで次々に繰り出される。ところどころで歌メロが不安定だったりする点はご愛嬌だが、ローレンの成長次第で、今後はより大きなスケール感のバンドにもなれるのではないか。「あと何曲かやったら、次はモグワイにお任せね(ローレン)」「彼らはスコットランドのバンドでしょ。僕らもスコットランドのバンドなんだよ(マーティン)」という話題もあったが、イアンがかつて活動していたエアーエオグラムやジ・アンワインディング・アワーズは、ケミカル・アンダーグラウンド(ザ・デルガドスの主催レーベル)からリリースを行っていて、つまり初期のモグワイとは先輩後輩の間柄にあたるわけだ。マーティンが弾けまくりのダンスを披露する終盤の一幕も含めて、華やかに盛り上がるライヴであった。

Hostess Club Weekender(第7回・1日目) @ 新木場スタジオコースト - MogwaiMogwai
■Mogwai
さて、グラスゴー・シーンと、2010年代の音響美ポスト・ロック/ポスト・ハードコア・シーンを見渡した初日のトリは、モグワイである。ライヴ・イヴェント・シリーズのHostess Clubは、そもそも2011年のモグワイ来日公演から始まったということもあって、HCWへの出演は感慨深い。ステージには新作『レイヴ・テープス』のアートワークをアレンジした装飾が持ち込まれ(中央の模様はどこかケミカル・アンダーグラウンドのロゴマークにも似ている)、スチュのフレンドリーな挨拶、そして新作曲“Heard About You Last Night”からパフォーマンスがスタートだ。新作曲はキーボード・サウンドを多く配し、ジェントルな曲調も目立つ作風だったが、ここからトリプル・ギター編成の“Rano Pano”に持ち込み、続いて“Jim Morrison”の騒音美で悲鳴のような歓声を誘うという掴み3曲の時点で、もう最高だった。スチュは一曲を披露するたびに「ドウモアリガトウ、サンキュー」と感謝の言葉を挟み込みつつ、ヴォーカル曲の“Blues Hour”、更に最新型モグワイのディープかつヘヴィなサウンドスケープへと潜行してゆく“Master Card”と、新作曲をふんだんに配したセットリストでパフォーマンスを進めてゆく。シンセ・サウンドも音の壁に加わる“The Lord Is Out of Control”のドラマティックな響きも素晴らしかった。ヴォコーダーにパーカッションにと、八面六臂の活躍で表現の幅を押し広げるバリーの姿も観ていて楽しい。「おっそろしいぐらいの大雪を乗り越えて、観に来てくれてありがとう」と告げながら、スチュはHCWや他のバンドにも感謝の思いを伝え、“Auto Rock”から始まったアンコールの3曲は、まさに轟音の暴風域といった様相で完璧なダメ押しであった。間もなく結成20年に至ろうとするモグワイの、自ら切り開いた王道、そして進化をまざまざと見せつけるステージだ。

お馴染みのサイン会や、モグワイによるオリジナル・ウイスキーの販売といったユニークな趣向も盛り込まれ、変わらずアットホームな雰囲気と興奮のライヴを提供しつつ、成長するHCWがあった。なお、既に公式HPでも発表されているように、6/21及び22には、次回HCWが開催されることも告知された。RO69では、ホステス・エンタテインメント代表取締役=アンドリュー・レイゾンビーによる、HCWへの思いを語ったインタヴュー記事が掲載されているので、未読の方はぜひ(こちら→http://ro69.jp/feat/hostessclub201402/)。(小池宏和)
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