ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - ART-SCHOOL/all pics by 中野敬久ART-SCHOOL/all pics by 中野敬久
ART-SCHOOLの恒例企画にして、3年連続でここSHIBUYA-AXで開催される「KINOSHITA NIGHT」。通算7枚目のフルアルバム『YOU』のリリースを4月9日に控えた今年は、初披露の新曲もいくつか飛び出す大盛況の一夜となった。この日のゲストは、ライヴ・アクトにPeople In The Box/ACIDMAN、開演前と転換中のDJアクトにTOMMY(BOY)/UCARY(UCARY & THE VALENTINE)/小林祐介(THE NOVEMBERS)、さらにトリのART-SCHOOLのゲスト・ヴォーカリストにUCARY/環ROYを迎えるという、過去最多の出演アーティスト。こちらも恒例、開演10分前に木下理樹自らライヴ中の注意事項を告げる影アナウンスが始まると、沢山のオーディエンスが集ったフロアから早くも拍手喝采が沸き起こる。

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - People In The BoxPeople In The Box
チクタクという時計の音が響きわたるステージに登場したのは、People In The Boxの3人。まずは“気球”で雄大なサウンドスケープを描き出し、時空を超越した悠久の世界へと場内を誘っていく。しかし山口大吾(Dr)の「行きますよ、AX!」を合図に雪崩れ込んだ2曲目“市民”で早くも猛ダッシュ。緊張と緩和が目まぐるしく入れ替わる複雑なアンサンブルを高らかに轟かせ、オーディエンスを釘づけにしていく。さらに波多野裕文(Vo/G)のしなやかな歌声が宙を舞う“球体”で、フロアの心地よい横揺れを誘引。その後のMCでは、1年ほど前にART-SCHOOLと地方を回った際に「オカサーファー」というあだ名を付けられたことを山口が愚痴っぽく明かして笑いを取るシーンもあったけど、3ピースとは思えない多彩なサウンドと爆発力で序盤から盛大なクライマックスを立ち上げてみせる3人の手腕はこの日も健在だった。「全力でぶっ殺していくんでヨロシク!」という山口のキメ台詞から後半へ突入すると、福井健太(B)のぶっといベースラインが炸裂する“天使の胃袋”、エモーショナルなメロディが天高く上昇した“はじまりの国”を連打して、聴き手を更なる深淵な世界へと誘っていく3人。“ニムロッド”からスリリングなセッションを経てラスト“ヨーロッパ”へ繋げると、波多野の絶唱とともに凛々しくも壮絶なノイズをまき散らし、目が眩むほどの真っ白な恍惚を描き出して圧巻のフィナーレを飾ってみせた。

セットリスト
1. 気球
2. 市民
3. 球体
4. 天使の胃袋
5. はじまりの国
6. ニムロッド
7. ヨーロッパ

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - UCARYUCARY
People In The Boxのメンバーがステージを去っても鳴りやまない残響を打ち消すようにスタートしたのは、UCARYのDJタイム。フロア内の下手側に設営されたブースから、小気味よいダンス・トラックが次々と投下されていく。シンディ・ローパー“She Bop”、ブロンディ“Heart of Glass”など70年代~80年代のUSポップ&ロックをフィーチャーしつつ、フロアをディスコティックに盛り上げていくUCARY。最後はザ・ナックの“My Sharona”でオーディエンスを沸かせてネクスト・アクト=ACIDMANにバトンを繋いでみせた。淡々としたパフォーマンスでありながら、彼女のキュートな魅力とセンスが光るアクトだった。

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - ACIDMANACIDMAN
SEの“最後の国(introduction)”が流れ、一糸乱れぬハンドクラップに迎えられてオン・ステージしたのはACIDMAN。浦山一悟(Dr)の「ワン、ツー!」のカウントから“アレグロ”に突入すると、鋼のごとく逞しく鍛え上げられた、三位一体のアンサンブルがダイナミックに爆発する。続く“新世界”で宇宙へと上り詰めると、大木伸夫(Vo/G)は激しいシャウトを轟かせ、佐藤雅俊(B)はベースを掻き鳴らしながらジャンプ。フロア中の拳が突き上がり、早くもクライマックスのような熱狂が押し寄せる。その後もオイ・コール導くアグレッシヴなナンバーから哀愁漂うアコースティック・ナンバーまで多彩な楽曲を披露して、ミクロからマクロへと視点が推移するACIDMANならではの壮大な音世界を広げていく3人。MCでは、大木は「インディー時代にずっと一緒にライヴをやっていた同志であるART-SCHOOLと、またこうしてライヴができて嬉しい」とか、「俺もガリガリって言われるけど、理樹を見てると勇気が湧いてきます」とか、長い付き合いだからこその感慨と親しみを込めた言葉を放ってオーディエンスの喝采を浴びていた。そして「去年ART-SCHOOLは『the Alchemist』というミニ・アルバムを発表しましたけど、その少し前に僕らも同じタイトルの曲を作って……」とスタートした“アルケミスト”で地球上のすべての生命を抱きしめるような豊潤な歌と音を届けると、壮絶なセッションから雪崩れ込んだ“ある証明”“飛光”を渾身の想いで叩きつけてフィニッシュ。大きな理想とロマンを乗せた高純度のロックンロールが、旧友との再びの共演という歓喜と相まって、高らかに鳴り響いた感情的なアクトだった。

セットリスト
1. アレグロ
2. 新世界
3. ストロマトライト
4. アイソトープ
5. WALK
6. spaced out
7. アルケミスト
8. ある証明
9. 飛光

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - TOMMYTOMMY
ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - 小林祐介(THE NOVEMBERS)小林祐介(THE NOVEMBERS)
続いてDJブースに登場したのは、THE NOVEMBERSの小林祐介。オルタナ&グランジの名トラックで攻め立てたアクトは、この日のオーディエンスにとって興奮の連続だったのではないか。プライマルスクリーム“Accelerator”、ザ・キュアー“Just Like Heaven”、更にはラルク・アン・シエル“HEAVEN’S DRIVE”まで入れ込んだ必殺の展開でフロアの熱気をじわじわと高めていく。ラストはジェームズ・イハの“Be Strong Now”! 小林の音楽的嗜好とサービス精神が垣間見られた、あっという間の25分間だった。

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - ART-SCHOOLART-SCHOOL
そして、いよいよトリのART-SCHOOLへ。木下理樹(Vo/G)と戸高賢史(B)のオリジナル・メンバーに、サポートの中尾憲太郎(B)と藤田勇(Dr)を加えたお馴染みの布陣で登場した彼ら。挨拶代りの轟音から1曲目へ流れると、歪んだギターフレーズと地を這うビートが渾然一体となって押し寄せる。“BABY ACID BABY”だ。最近のライヴでは、冒頭で披露されることの多いナンバー。ハードエッジな音塊でオーディエンスを一発で戦慄させるこの曲は、危うさや暴力性はそのままにライヴバンドとしての見事な結束力を築くに至ったART-SCHOOLの「今」を映し出すのにピッタリの楽曲だと思う。続く“real love/sloe dawn”からソリッドな爆走がスタートすると、もう緊迫感しかない、というような気迫あふれるステージングを披露してバンド。白ブチのサングラスをかけた理樹はフライングVを掻き鳴らしながら掠れた声で絶叫し、戸高は長い髪を振り回しながら美しいアルペジオを届けていく。最初のMCでは5月末に迫ったSHIBUYA-AXの営業終了に触れ、「AXは思い入れのある場所です。皆さんもどんどん思い出ダイブしてくださいね」と理樹。思い出の詰まった会場でのラストライヴという感慨も相まって、フロアの熱気はみるみるうちに上昇していく。

“欲望の翼”などで儚くも美しいサウンドスケープを描き出した後は、リリース目前となった『YOU』の収録曲を披露するパートへ。切ない歌声と爆音が胸を締めつける“HeaVen”、タイトな歌と音が矢継ぎ早に放たれる“Promised Land”、超速BPMの上で狂気と官能がせめぎ合う“Miss Violence”など、どれも紛れもないART-SCHOOLのサウンドでありながら、その熱量と鋭利が格段に増していることを告げるパフォーマンスの連続。UCARY をゲスト・ヴォーカリストに招いての“YOU”では、UCARYとの重層的なハーモニーと共に柔らかなサウンドを響かせ、奥深いアンサンブルの妙を魅せてくれた。その後は「今日の出演者には本当に感謝しています。特にACIDMANとは全然お客さんが入らない頃から何度もライヴをやっていて。お互いよく(音楽シーンで)生き残れたなぁと」(理樹)、「ART-SCHOOLに入って初めてライヴやったのがSHIBUYA-AXで……」(戸高)と、それぞれの感慨を滲ませたMCを経て怒涛のクライマックスへ。理樹と戸高がステージ前方に進み出てイントロを掻き鳴らした“BOY MEETS GIRL”を皮切りに、前のめりな暴走モードでスリリングなアンサンブルを立ち上げていくバンド。オイ・コールとダイブが乱立するフロアを、ラスト“FADE TO BLACK”で更に熱く燃え上がらせて本編を締め括った。

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2014」@ SHIBUYA-AX - ART-SCHOOLART-SCHOOL
アンコールでは、本編中にかけていたサングラスを外してオン・ステージした理樹。なんでも先日のライヴでダイブした際に怪我をした片目を隠すためにサングラスをかけていたそうだが、「よく考えたら剥き出しで傷跡を見せていくのも、それこそがART-SCHOOLだなと思って」と告げてオーディエンスの歓声を浴びる。そして環ROYをゲストに招いての“革命家は夢を観る”で、流麗なメロディとフロウが交錯するバンドの新境地を見せた後は、“プール”“ロリータキルズミー”“あと10秒で”の必殺チューン連打で大団円……と思いきや、鳴りやまない拍手に迎えられて再びステージに現れた4人、ダブル・アンコールに応えて“車輪の下”をブチかまし、最後は理樹のフロアへの豪快なダイブをもって4時間にわたるイベントは幕を閉じた。ART-SCHOOLの進化を刻むとともに、同世代バンドや彼らを慕う後輩アーティストとの濃密なフレンドシップが溢れ出るイベントとして、今年も大盛り上がりとなった「KINOSHITA NIGHT」。次回はどんなドラマが生まれるのか、今から楽しみで仕方ない。(齋藤美穂)

セットリスト
1. BABY ACID BABY
2. real love/slow dawn
3. 夜の子供たち
4. サッドマシーン
5. JUNKY’S LAST KISS
6. 欲望の翼
7. LOST IN THE AIR
8. その指で
9. HeaVen
10. Promised Land
11. Miss Violence
12. YOU
13. BOY MEETS GIRL
14. スカーレット
15. UNDER MY SKIN
16. FADE TO BLACK
アンコール1
17. 革命家は夢を観る
18. プール
19. ロリータキルズミー
20. あと10秒で
アンコール2
21. 車輪の下
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