PUNKSPRING 2014 @ 幕張メッセ9・10・11ホール

「ジャンル別フェス」の先駆けにして日本最大級のパンクの祭典『PUNKSPRING』も、2006年春の初開催から実に8回目。第1回のトリを務めたバッド・レリジョンが2009年以来3度目の降臨! スウェーデンが生んだ荒ぶるガレージ・ロック貴公子軍団・ザ・ハイヴス! 2007年・2009年・2013年とNOFXとして出演しているファット・マイクは、2008年に続きミー・ファースト・アンド・ザ・ギミ・ギミズとして登場!といった海外の豪傑バンド勢を、MAN WITH A MISSION/THE BAWDIES/coldrainといった日本の精鋭たちが迎え撃ち、11:00の開場と同時にスタートしたヒカル(BOUNTY HUNTER)のオープニングDJから実に11時間近くにわたって至上の爆音が吹き荒れる1日となった。昨年同様、東京(幕張メッセ/3月29日)・大阪(神戸ワールド記念ホール/3月30日)、名古屋(Zepp Nagoya/3月31日・4月1日)の3会場での開催となる『PUNKSPRING 2014』。その4日間のトップを飾った幕張メッセ公演ーー「RED STAGE」「BLUE STAGE」の2ステージに洋邦16組が入り乱れたこの日の模様を、以下ダイジェストでお届けしていくことにする。

「RED STAGE」で大トリを飾ったのはメロコア・レジェンド:バッド・レリジョン! いきなり“Fuck You”“Dharma and the Bomb”と最新アルバム『True North』の楽曲を畳み掛けた冒頭から“Punk Rock Song”“Infected”“American Jesus”のエンディングまで、50分ほどの持ち時間の中で20曲を連射。今回は名門パンク・レーベル「エピタフ」社長でもあるブレット・ガーヴィッツ(G)が不在なのに加え、長年BRサウンドを支えたギタリスト=グレッグ・ヘトソンが昨年脱退&元THE CULTのマイク・ディムキッチを加えた新編成での初『PUNKSPRING』出演となったが、今や人の良さげな学校の先生の如きルックス越しに淡々と、しかし図太い歌声を響かせるグレッグ・グラフィン、そしてマイク&ブライアン・ベイカーのメッセ丸ごと震わせるようなWギター・サウンドは、パンク・ロックの歴史と迫力を存分に感じさせてくれた。そして、一方の「BLUE STAGE」のトリを務めたのはザ・ハイヴス! 自身5年ぶりとなる『PUNKSPRING』のステージ、1曲目“Come On”からキレッキレのペレ(Vo)のテンションは、“Go Right Ahead”のコール&レスポンスや「ミンナ、サケベ!」「テヲタタケ!」の煽りなどで刻一刻と高まっていく。“Won't Be Long”ででっかいハンドウェーブを巻き起こし、最後は「スワレ!」とオーディエンスを座らせてからのハイジャンプで「BLUE STAGE」を狂騒空間へ叩き込む! ガレージ・ロックンロールを極限爆発させる王子スタイルの5人が、紛れもないパンク性を体現してみせたのは実に痛快だった。

 洋邦混成型のパンク・フェスとして開催されている『PUNKSPRING』だが、幕張会場に関して見れば、出演アーティストに占める割合が初めて邦楽バンドのほうが高くなったことも、今年のラインナップの特徴のひとつだ(昨年はオープニング・アクト:KNOCK OUT MONKEYも含め洋邦8組ずつの出演、それ以前の開催時は洋楽アクト数が上回っていた)。その中でも「日本代表」的な位置を占めたのが、パンク/エモ/エレクトロコアなどを取り込んで巨大な渦を巻き起こすオオカミ集団:MAN WITH A MISSION! 2年連続出演となるMWAM、「コノステージニ立テテ、心カラ嬉シク思ッテオリマス! ヤッテルカ? パンクシテルカオ前ラ!」というJean-Ken Johnny(G・Vo・Rap)のコールで熱い大歓声を巻き起こしつつ、“distance”など鉄壁アンセムから“evils fall”“Emotions”はじめ最新アルバム『Tales of Purefly』曲まで披露。今年秋には全米デビューも控えたMWAMの威力と訴求力を存分に見せつけていた。ラストの“FLY AGAIN”でメッセ一面にエモーショナルな多幸感が沸き上がった瞬間は、『PUNKSPRING 2014』を語る上で欠かせない名場面のひとつとなった。そしてもう一組:THE BAWDIES! “IT'S TOO LATE”“JUST BE COOL”など必殺ナンバーをワイルドかつダイナミックに響かせた後、「ちょっと小話いいですか?」とROY(Vo・B)が、「自分たちはガレージと呼ばれることが多くて。ガレージは60年代の音楽、でもそれが評価されるのは70年代パンクの人たち。ガレージはパンク・スピリットを持ったロックンロールなんです!」という「自己紹介」兼「所信表明」的なMCで、『PUNKSPRING』初出演のステージにしっかりとその足跡を刻んでいたのが印象的だった。「パンクとロックンロールを挟んだら?」というシャウトから流れ込んだ“HOT DOG”のスリリングな加速感は、4人の「今」の衝動剥き出し感をリアルに物語っていた。

 ベテランから新星まで、各ステージのトリ&トリ前を除けば1アクト30分で洋邦バンドが次々と登場する今年の『PUNKSPRING』。パンク/メロコア猛者たちによるスーパー・グループ=ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミ・ギミズは“Take Me Home, Country Roads”の爆裂バージョンから甲斐バンド“HERO”にブルーハーツ“リンダリンダ”まで禁じ手なしのパーティー・パンク劇場を展開してくれたし、昨年活動再開したばかりのスコットランドの雄:ザ・フラテリスは“Flathead”(以前iPodのCMで流れていた大ヒット曲)をはじめ“We Need Medicine”“Chelsea Dagger”など出し惜しみなしの選曲で、あのささくれポップ感を全方位的に振り撒いてみせた。日本語曲を多数カヴァーしているUKパンクの古豪・スナッフは意外にも今回が『PUNKSPRING』初出演。怒濤のドラム・ヴォーカルを炸裂させていた唯一のオリジナル・メンバー=ダンカン・レッドモンズは、“アンパンマンのマーチ”激速バージョン(「“アンパンマン for バイキンマン”」と紹介してました)で息切れして「シンドイナー」などとボヤきつつも至上のパワー・ポップ・パンクを叩きつけていたし、ラストで乱入したファット・マイクとともに幕張メッセを思いっきりアゲ倒してみせた。

 初めて観る人どれぐらいおる? 俺たちは自己紹介しにきたんじゃないんですよ! ライヴしにきたんですよ!」(G・Vo:越智健太)とメロディック魂を轟々と噴き上がらせて『PUNKSPRING 2014』の幕開けを飾ったオープニング・アクト:BUZZ THE BEARS。田邊駿一(Vo・G)が高校生の時から抱いていたという『PUNKSPRING』出演の夢を果たしたBLUE ENCOUNTは「こんな時代だからこそ、絶対夢は叶います!」とその想いを“HANDS”に託して熱演してみせた。初出演の喜びが30分間あふれまくっていたROTTENGRAFFTYは、「感謝の気持ちをこめて、この曲で全員……死んでくれ!」(Vo:NOBUYA)とラストに“THIS WORLD”投下! NOBUYA/N∀OKI(Vo)のみならずKAZUOMI(G)まで舞台を降りて煽り倒していた。dustboxは「ここ、ライブハウスってことでいいですよね?」(B・Vo:JOJI)とばかりに“Try My Luck”をはじめ極上のメロディ&3ピースながらタフでアグレッシブなビートを響かせていたし、USミズーリ発パンク3兄弟=ラドキーは70年代パンクのようなストイックな荒々しさと骨太感を兼ね備えたサウンドでメッセをびりびりと震わせていた。

 2年前にMasato(Vo)の帰国遅れにより出演キャンセルとなった無念を、ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインとの欧州ツアーで鍛え上がったサウンドとともに爆発させたcoldrain。USミシガン発ポスト・ハードコア~エレクトロコアの硬質感と切れ味をまざまざと見せつけつつ、ピット仁王立ちで観客を煽るクレイグ・オーウェンズ(Vo)が圧巻の熱量を巻き起こしていたチャイオドス。「お祭り騒ぎを始めようぜ!」というJose(Vo・G)のエネルギッシュなコールから“PARTY PARTY”“Summer Frequence”などを畳み掛けて超高気圧的パンク空間を描き出してみせたTOTALFAT。ザ・クラッシュ“London Calling”から“Blah Blah Blah”へ雪崩れ込み、「日本という国について4分間だけ考えてみてくれ!」(Vo:MAH)と轟かせた“WHO'S NEXT”などを経てラストの“KiLLiNG ME”までカオティックに駆け抜けたSiM……どのアクトをとっても決定的瞬間だらけの、最高のパンク祝祭空間だった。大阪・名古屋に参加される方もめいっぱい楽しんで!(高橋智樹)
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