「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂

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所属事務所Laughin’の設立8周年を記念した、ハナレグミとレキシによる対バンイベント「La族がやってくるラァ‼ ラァ‼ ラァ‼」。前日の大阪城音楽堂公演に引き続き、桜もまだまだ開花中の東京・日比谷野外大音楽堂にて開催された2日目の模様をレポートする。不安定な気圧の変化で真冬並みの寒波が押し寄せ、ヒョウが降ることも予想されたこの日の東京。しかし夕刻の日比谷の空に広がったのは、晴れやかな青空。冷たい強風をモノともせずにビールを煽るお客さんも多い中、開演時刻の17時ちょうど、出陣を知らせるホラ貝の音が勇ましく鳴り響く。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
ギターの健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)/ピアノ&コーラスの元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)/ベースのヒロ出島(山口寛雄)/ドラムの大仏ランドのプリンス(みどりん from SOIL&”PIMP”SESSIONS)というバンドメンバーに続いて、オレンジの紋付+紺の袴という華やかな武家衣装で登場したのは、レキシ a.k.a.御館様こと池田貴史。「見て、おニュー!」と衣装を見せつけ、「こんにちは、ケビン・コスナーです」とギャグを飛ばして、のっけからお客さんをズッコケさせる。しかし登場から5分が経過したところでようやく1曲目の“キラキラ武士”へ突入すると、そのソウルフルな歌声を朗々と響かせて会場の空気を一変させていくレキシ。終盤には華麗なキーボード・プレイも披露して、一面のハンドウェーブが広がる客席の一体感をじわじわと高めていくのであった。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
その後も“大奥~ラビリンス~”からアース、ウィンド&ファイアの“セプテンバー”に突入したり、「K・O・F・U・N」の文字を象った振り付けで踊らせた“古墳へGO!”でXジャンプを盛り込んで「レキシJAPANでした!」と絶叫したりと、ここぞとばかりに他人のネタを持ち込んで会場を沸かせていくレキシ。その悪ノリっぷりはMCでも留まることを知らず、遣唐使こと渡和久にムチャ振りしてNTTドコモのCMソングとしてオンエア中の渡のソロ曲“涙”を即興で弾き語らせながら、「ドサクサに紛れてワンコーラスも歌いやがって!」と悪態をつく始末である。この奔放すぎる展開に付き合わされるメンバーも大変だけど、さすがは熟練のプレイヤーが揃ったレキシ一門。6月4日にリリース予定の4thアルバム『レシキ』からの新曲“キャッチミー岡っ引きさん”では、煌びやかなメロディと巧みなアレンジで彩られたふくよかなアンサンブルを響かせて、ピースフルな高揚感を生み出していくのであった。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
そして時間オーバーを知らせるパトカーの赤色警光灯が点滅し、「え、もうそんな時間!? これって残り2~3分になったら光る約束じゃなかったの?」と一芝居打ったところで、ラストを飾ったのは“狩りから稲作へ”。ここでも「Xみたいな感じでやって!」と大仏ことみどりんに爆裂ドラミングを披露させたり、「本当はスカパラさんみたいにやりたかったんだよなぁ」とボヤきながら東京スカパラダイスオーケストラの“DOWN BEAT STOMP”をプレイさせたりと好き放題にバンドを引き回し、最後は百恵ちゃん風にハンドマイクを床に置いてステージを後にしたレキシ。笑いと音の狭間を自由に行き来しながら抱腹絶倒のステージを創り上げるレキシの卓越したショウマンシップに魅せられた、あっという間の1時間だった。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
そして。日が暮れかけたステージにSEなしで現れたのはハナレグミ。茂木欣一(Dr)/加藤隆志(G)/柏原譲(B)/沖祐市(Key)/NAGO(Tp)/GAMO(Sax)というお馴染みのバンドメンバーを引き連れての登場である。「ようこそお越しくださいました。いやー、すごかったね。楽屋のモニターで(レキシを)観てたけど、神様みたいに神々しかったです」とゆるーいトークを展開したかと思いきや、唐突に歌い出したのは“大安”。その最初の一声が発せられた瞬間、会場の空気がふわっと持ち上がるような感覚に襲われる。そしてワーッと沸き起こる大歓声。何度聴いても、この人の歌声の持つ測り知れない包容力には驚かされる。そのまま徐々にバンドの音が重なって、サビでハンドクラップと大合唱が沸き起こると、会場は至福ムード一色に。「寒い夜を温めていきましょうね」と流れた“Jamaica song”では、丁寧に刻まれるスカのリズムに乗って満場の客席が心地よく揺れていく。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
そのまま“愛にメロディ”“Crazy Love”をメドレー形式で繋げて、寒空の下で冷え切ったオーディエンスの身体を内から温めていくハナレグミ。「一緒に歌ってくれー!」と雪崩れ込んだ杏里の“オリビアを聴きながら”のカヴァーでは、客席の声が小さいからと最初から演奏をやり直して大合唱を誘うという、卓越した扇動力も見せつける。「日頃の行いが良かったせいだな。ヒョウが降ったらどうしようかと思ったよ。俺らは(屋根があるから)いいけど、目の前で痛がっている人を見ながらライヴしなきゃいけないのかとリハのとき悩んでたから……」と独特のユーモアと温もり溢れるMCを展開した後は、“家族の風景”へ。何気ない日常の風景を愛情たっぷりに綴ったアコースティック・サウンドが、月と星がキラキラと瞬く日比谷の夜空と溶け合っていく。そして、次に演奏されたポール・サイモンの“Still Crazy after all these years”のカヴァーが最高だった。不本意なお見合いの最中に10年以上前に付き合っていた彼氏から電話がかかってきて、思わずワンワン泣いてしまったという女友達のエピソードを披露した後、ノスタルジックなオルガンの音色からスタートしたその曲。オリジナル曲に留まらず世にある名曲を軽やかに歌い上げ、日々のトキメキも哀しみも優しく包み込んでみせる名手・ハナレグミの本領が発揮された名演だった。

「La族がやって来るラァ!!ラァ!!ラァ!!」@日比谷野外大音楽堂
そして、スカパラメンバーを中心としたバンドを従えての“追憶のライラック”で拍手喝采を浴びた後は、「晴れたからこの曲は必要ないかな?」と言いつつ“明日天気になれ”をプレイ。《今日も天気は雨模様》の歌詞を《今日の天気は晴れ模様》に変えるアドリブを繰り出して会場を高揚させると、ラスト“あいまいにあまい愛のまにまに”ではメンバー紹介に乗じたソロリレーとともに伸びやかな歌声を届けて、終始穏やかで温かな時間が流れた1時間のステージを爽快に締め括ってみせた。

アンコールでは、裸スーツに原始人のコスチュームを身に纏い、La族ならぬ裸族となってオンステージしたハナレグミとレキシの2人。ギャグを飛ばしまくるレキシに冷ややかな視線を送り続けるハナレグミという、20年来の仲ゆえの絶妙の距離感でトークを繰り広げると、イベントタイトルにちなんだ曲として最後に披露したのは久保田利伸の“LA・LA・LA LOVE SONG”。《めぐり合えた奇跡が ハニワの色を変えた》と懲りずにネタをブチ込んでくるレキシの暴走っぷりで最後の爆笑を誘いつつ、2人の華麗なボーカル・リレーと会場一丸の「♪ラララー」のシンガロングで絶頂を築いて3時間のステージは大団円を迎えたのだった。

冷たい風にさらされながらも、ハナレグミとレキシが放つ温かなヴァイブスによって終始開放的なムードに包まれた一夜。豪華なバンドメンバーゆえの意外な展開もあり、振り返ればあまりにも見どころの多いステージだった。「今回が8周年だから次は16周年で会いましょう」とハナレグミは言っていたけれど、こんなに楽しいステージなら毎年でも観たい。そう心から思える、至福極まりないステージだった。(齋藤美穂)


セットリスト
レキシ
1. きらきら武士
2. 大奥~ラビリンス~
3. 古墳へGO!
4. キャッチミー岡っ引きさん
5. 狩りから稲作へ

ハナレグミ
1. 大安
2. メドレー(jamaica song~愛にメロディ~Crazy Love~オリビアを聴きながら)
3. 家族の風景
4. Still Crazy after all these years(by ポール・サイモン)
5. 追憶のライラック
6. 明日天気になれ
7. あいまいにあまい愛のまにまに

アンコール
1. LA・LA・LA LOVE SONG
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