いよいよ2015年9月2日(水)のリリースが目前に迫った、BIGMAMAのタワーレコード限定シングル=『MUTOPIA』。一点の曇りもない高揚感をそのまま至上のダンスミュージックへと描き上げたタイトル曲“MUTOPIA”はもちろん、寓話と黙示録が入り乱れたような金井政人独特の詞世界が、高純度に研ぎ澄まされたアンサンブルの中で美しく極まったカップリング曲“SKYFALL”も、今のBIGMAMAのハイパーなクリエイティヴィティをはっきりと物語っている――のだが。ここで触れたいのは今作の「3曲目」だ。
全国を大きく7ブロックに分け、「その土地に暮らす人、名所や名産、思い入れのあるフェスなどを題材に地域ごとに歌詞を書き下ろし」た“MUTOPIA”のご当地バージョンを制作して上記2曲とともに収録。【北海道盤】【東北盤】【関東盤】【中部北陸信越盤】【近畿盤】【中国四国盤】【九州沖縄盤】という、収録トラックの異なる7種類のシングルとしてリリースするのである(ちなみに、ジャケットも7パターン用意されている。詳細はこちら→ http://ro69.jp/news/detail/129188)。
原曲の《気の合う仲間で行こうぜgrooving》のフレーズが《ジンギスカンと最高のgrooving》(北海道盤)、《牛タンと舌を絡ませgrooving》(東北盤)になっていたり、《恥じらいや遠慮は無しにしようぜ》のパートが《かがやきに乗って百万石へ》(中部北陸信越盤)、《赤ヘルで砂丘に滑り込んで》(中国四国盤)、《博多美人とほら恋に落ちて》(九州沖縄盤)にアレンジされていたり……といった具合に歌詞にちりばめられたご当地ネタを見ているだけでも、バンドのワクワク感が伝わってきて楽しくなる。とはいえ、各地方のライヴでの「フェイクとしての歌詞アレンジ」ならまだしも、7種類のリリックを作り上げ、ついには7バージョンの音源化まで至った理由は、単に「ワクワク感」や「楽しさ」だけでは到底説明がつかない。
金井政人という人は、『君想う、故に我在り』(2013年)というアルバムタイトルにも顕著なように、作品のクオリティやライヴのスケール感などではなく、自分が発した言葉/発信した表現を受け取った「君」の表情や仕草を通してようやく達成感を得ることができる――という人生哲学を、これまでにも多くの楽曲に結晶させてきた。今年2月の最新アルバム『The Vanishing Bride』は言わば、その世界観のギアをメンバーとの間で完全に噛み合わせることで、新次元のダイナミズムとポップ感を獲得した作品でもあった。
そして、今作『MUTOPIA』。MUSIC(音楽)×UTOPIA(楽園)というタイトルの通り、BIGMAMAは揺るぎない確信をもって、正真正銘の「音楽の楽園」を作り上げるために、少しでも「君」に近い言葉で、よりダイレクトに「君」の心を奮い立たせ、「君」とともに歩もうとしている。BIGMAMAから日本全国へ向けた、渾身の「7つのラブソング」。ぜひとも真っ向から受け止めてほしいと思う。(高橋智樹)