「じつはブルースしか歌ってないから、僕は」――キュウソネコカミにとっての「売れる」とは?

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もっとファンの人に近づきたいっていう曲なんですよ。おまえらひとりひとり好きだ、ぐらいの

――このサードシングルは、これまでの2枚のシングルとは意味合いが違うよね。

ヨコタ シンノスケ(Key/Vo)「違いますね、だいぶ」

ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt)「いや、だからビビってるんすよ。僕もめっちゃいい曲だと思ってるんですけど、メンバーとか会社の人とかの前でも、『これはマジで売れるぞ』っていう言葉が言えないんすよね。『求めてるものと違う』って切り捨てられたら一発で終わるじゃないですか。それを超える曲の良さが、ちゃんと世間に響くのか俺わかんなくて」

――なるほどね。

ヨコタ「俺らはすごくいい曲だから、絶対届くって言ってるんですけど。これは絶対ほかの曲とまぎれさせずに1曲でいくぞ、っていう感じが最初っからあったんですよね。感覚的にもすごい自信がありました。『これだ!』って」

――それこそ “何も無い休日”以来の、心にしみる系キュウソ。

ヤマサキ「そうなんですよ。あの、もっとファンの人に近づきたいんすよ、この曲で。なんか、離れたくないんですよね。伝わって欲しいんですよね。もっと近づきたいっていう曲なんですよ。おまえらひとりひとり好きだ、ぐらいの。そんなことは言ってないんですけど」

――うん。

ヤマサキ「1回買って1回聴いて1回踊って終わりじゃなくて。それぞれの人の、いくつの人にも届く、一生付き合っていって欲しい曲──そうなったらなあっていう」

――前回の“サギグラファー”のインタビューの時、「次もっといいのあるんすよ」って言ってたけど、それがこの曲なの?

ヨコタ「そう。できたのは“サギグラファー”より全然前で。明日沖縄でライブだってスタジオに入らせてもらった時に、ケンカってほどでもない、ケンカじゃないよね、もうあれ」

ヤマサキ「うん」

ヨコタ「みんな苛立ってるし、疲れてるし、なんか不安だしで、『おまえダメだよ』、みたいな感じまで出て。これはヤバいなってみんな思ってたけど、止めらんない感じが結構あったんですよ」

ヤマサキ「で、その時に脚本がきて、映画の。その脚本読んだら自分の境遇とすごい似てて。で、読んですぐに《ボロボロになってやっと気付いたよ》っていう、自分が主人公じゃなくて脇役側だったんだ、ってフレーズが出てきて、次の日のリハで歌うっていう(笑)」

――(笑)。

ヨコタ「いや、だから、あんだけ状況が大変でしんどい中、歌で持ってくるってすげえなって思ったんですよ。それができる奴がやっぱヤマサキセイヤだなあって思って」

――なるほどね。セイヤくん的にはどうだったの? メンバーに聴かせた時にそれなりの手応えがあったんだとは思うんだけれども。「よっしゃ、名曲できたぜ!」みたいな感じはあった?

ヤマサキ「いや、ただ単に自分の傷ついた心を曲にしただけみたいな。心動いた時に曲作るタイプなんで、ガッてなった時に作って。ただ、今僕らのファンて女子多いじゃないですか。でも、脚本も歌詞も男子からの目線だから、ちょっと女子にはわかんないかもなっていう不安はあったんすけど。作っていく過程で、そこはもう全部無視して。俺男なんだから、男の曲書こうと」

――うん、だから身も蓋もない曲だよね、言ってしまえば。戦略性も何もないっていう。

ヨコタ「だから、『マジでわかってくれよ』っていう歌だったんですよね。セイヤがもう、『俺のことをわかってくれよ』っていうことを言ってる歌」


最近よく『噛みついてないですね』って言われるんですけど。牙伸びすぎて、自分に刺さってるんですよ

――自分を自分で殴ってるみたいな曲になってるよね。

ヤマサキ「最近よくいろんな奴らに『噛みついてないですね』って言われるんですけど。噛みついてなさすぎて、牙伸びすぎて、自分に刺さってるんですよ」

――はははは。

ヤマサキ「もうぐっさりいってんすよ、たぶん」

ヨコタ「自分を刺しちゃうというね」

ヤマサキ「結構ね、最終的に『俺もそうだよ』っていう曲が多かったんですけど、やっぱり噛みついてる部分だけピックアップされがちなんで。だから結構深く読むと、だいたい自分に刺さってるんですけどね。今回はほんとに、全部刺さってるかもしれないですね」

――だからこれ書いた本人は客観的に見ることはできないだろうし。

ヨコタ「そう、自分の曲すぎてね」

――ねえ。わかんないでしょ、正直。

ヤマサキ「だから俺が一番泣いてますよ(笑)。デモの段階でめっちゃ泣けてくるんすよね、自分のことだから(笑)。でもライブとかで披露すると、僕の思いとか、なんで作ったかも知らないのに、その曲聴いただけで涙出てるお客さんも結構いて」

――だから「わかってほしい」っていう気持ちはこの曲に出てるけれども、実はファンは意外なほどに、既にわかっていたというか。

ヨコタ「そうですね。ほんとに」

ヤマサキ「じつはブルースしか歌ってないですからね、僕」

――そのブルースの極限だよね。

ヤマサキ「そうっすよね。だってこっちのほうが好きなんですもん。好きなことをやって、絶対売れたいですもん」

――あとは、俺こういう人間だからこういう歌詞書いてきたんだよみたいな、そういう答え合わせにもなってるような気がするよね。

ヤマサキ「そうですね。もうだから根が華やかな芸能人じゃないってことですよね、だから(笑)。俺すごい悔しいですよ。ほかのバンドマンたちがキャーキャーされてそれにうまく対応してるの見ると、『なんで俺にはできねえんだよ!』っていうのはすげえあります(笑)」

ヨコタ「だから、俺たちが人気があるっていう体でこのシングル聴くと、やっぱりおかしいなっていう感じがすると思うんですよね。人気があるんだったらもっと人気があるような曲書けよっていう(笑)」

ヤマサキ「もっとウケる曲書いたら売り上げ上がんのにって思いはあるんですけど、書けなかったんですよ」

――いやいや、これしかないと思うよ、キュウソネコカミが投げるべきストライクって。

ヤマサキ「でも、ほんまイケてない奴の思想まるまるなんですよね。ほんまはめっちゃモテたいし。もう華やかな生活したいのに。それがなぜかこう、性に合わないというか。だから書き方として、『あんま悩んでないよ』って書いといて下さい」

――なんでだよ(笑)。

ヤマサキ「ははは。なんかねえ、絶対悩んでると思ってないです、ファンも。だから、また病気になるんじゃないかとか、変な心配されるの嫌なんですよ。『元気だよ』って書いといて下さい(笑)」

ヨコタ「『……と力ない声で笑った』って書いといて下さい(笑)」


テキスト=小川智宏

『ROCKIN'ON JAPAN』2016年11月号より一部抜粋
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