【コラム:UVERworld】『一滴の影響』を聴いて、たった「一曲」の影響力とは何かを考える

【コラム:UVERworld】『一滴の影響』を聴いて、たった「一曲」の影響力とは何かを考える - 『一滴の影響』通常盤『一滴の影響』通常盤

2017年2月1日にリリースされたUVERworldのシングル『一滴の影響』は、2014年のアルバム『Ø CHOIR』のあとに放たれたシングルとしては4作目にあたる。近年の彼らの作品は、カップリング曲も含めて、一曲一曲の手応えが本当にとんでもない。曲調やメッセージはさまざまだが、すべて決め球であり、まるで1イニングをたった3球で、1試合を27球で片付けてしまう怪物ピッチャーのようである。ときにタイアップ曲でありながら完璧にエモーショナルなUVERworld節であり、新曲としてライブ披露されようものなら見事なハイライトの時間を生み出してしまう。

まずは、ニューシングル表題曲“一滴の影響”だ。獰猛でスリリングなロックサウンドと、その生々しさを損なうことのないエレクトロサウンドが融合し、激しくも揺るぎないシンフォニーのように響く楽曲。《真面目に生きていれば いつか報われる/そうやって言い切ってしまえば それは嘘になる》と、TAKUYA∞は綺麗事では済まされないメッセージを絞り出した上で、《許せば進めるし 恨みは立ち止まらす/あれは僕のせいにしな それも僕のせいにしてよ》と歌っている。この余りにも懐の大きな、引き受けっぷりはどうだろう。

目下発売中の『ROCKIN’ ON JAPAN』2017年3月号インタビュー記事の中で、TAKUYA∞はこの曲が、荒天中止となった「イナズマロック フェス 2016」2日目、UVERworldの出演が果たされなかった悔しさをきっかけに生み出されたことを語っている。天候は誰のせいでもないが、UVERworldは共演者や来場者の悔しさまでも引き受け、そこから新しい物語を紡ごうとする。言うなれば、「一曲」の影響から始まる物語だ。「イナズマロック フェス 2017」の前日に開催される「イナズマロック フェス 2016 リターンズ」(前回中止となった日程の代替公演)への出演も決定している。

周知のとおり、この曲は“CORE PRIDE”、“REVERSI”と続いてきた『青の祓魔師』シリーズとのタイアップ最新作でもあり、アニメ『青の祓魔師 京都不浄王篇』のオープニング曲でもある。こうして過去の楽曲と並べてみると分かるが、これらはいずれも近年のUVERworldのライブで熱狂を支えている重要な楽曲たちだ。一過性の話題を振りまく楽曲として消費されることがない。『一滴の影響』期間生産限定盤には“CORE PRIDE”や“REVERSI”も収録されており、『青の祓魔師』との蜜月によって育まれてきたUVERworldの歌=生き様を確認することができる。

そしてこちらも、“Collide”に続く映画シリーズタイアップとなった『新宿スワンⅡ』挿入歌の“エミュー”。野心と欲望渦巻く歓楽街のタフでダーティーな情景と、真っ向格闘するナンバーだ。また、初回生産限定盤と通常盤には、AK-69のアルバム『DAWN』に収録されていたコラボ曲“Forever Young(AK-69 feat.UVERworld)”も収録。AK-69のマイクワークとバンドサウンドが面白いようにはまった楽曲であり、《ブルハ 尾崎 永ちゃんが教科書》とラップするAK-69の、世代や表現スタイルを超えた姿勢にも胸を焦がす。

ポップミュージックが楽曲単位で聴かれる時代になった、と言われて随分経つけれども、だからこそUVERworldは、バンドとしての人間くさいメッセージも、タイアップ曲としての役割も、ライブ曲としての効力も、すべてを一曲一曲に注ぎ込む。「一曲」の影響がもたらすものを最大限に期待し、リスナーとの物語をまた作り上げてゆくのである。未だ音源化されていない新曲群も含めて、UVERworldとリスナーの関係は、これからも、一曲ごとに信頼感を高めてゆくはずだ。(小池宏和)
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