新作発表が待たれるベック、過去エイフェックス・ツイン的な作品まで作ったと明かす
2017.07.17 16:00
今年『モーニング・フェイズ』以来3年ぶりの新作をリリースする予定だというベックだが、新作や制作過程についての発言をまとめてみたい。
ベックは7月11日にコロラド州レッドロック野外劇場でライブを行い、8月から北アメリカ・ツアーに乗り出す予定になっているが、もともと予定されている新作は『モーニング・フェイズ』がリリースされた2014年以前から取り組んできたもので、『モーニング・フェイズ』リリース前後にも、アコースティックを軸にした作品(『モーニング・フェイズ』)とスタジオワークに没頭した作品と2作品が同時進行中だと伝えられていた。
結局、スタジオワークを濃厚に行った作品は見送られることになったが、その後試行錯誤は続けられ、特に大きなインスピレーションとなったのはこの5年のツアー活動だとベックは語っている。
フェス出演やザ・ストロークスとのジョイント・ツアーなどでより若いオーディエンスと触れ合ったことによって触発されたと、次のように「ローリングストーン」2016年7月掲載の記事において語っている。
「夏の夜で、みんなライブ中にも両手を上げてるんだよね。みんなで分かち合う、祝祭的なものになっているんだ。あの感じをスタジオに持ち込みたかったんだよ。喜びのエネルギーっていうのかな、そういうのをね。なんかちょっと目を覚まされるような、そんなものをね」
また、音楽サイトの「ザ・ノウ」にも「ここ5年間のライブはすごく思い出深いものになったし、祝祭的でもあったと思うよ」とベックは語っていて、「ぼくが駆け出しだった頃、きっとこんな聴かれ方をする時代がくるって夢見ていたものなんだ」と振り返っている。
さらに試行錯誤の多さはまた結局お蔵入りになる作品も多いということで、そんな作品について更に語っている。
「これまでに出してこなかったアルバムもいくつかあって、90年代にはエイフェックス・ツインやクラフトワーク、それと日本でいろいろ探し当てた変なエレクトロニック・ミュージックから影響を受けた作品を作ったりもしたんだよ。これのバージョンのひとつとか、あるいは同じような文脈のものとかも、いずれ出すことになるかもしれないよね」
新作の制作はグレッグ・カースティンとともに行われ、シングル・リリースされた"Dreams"、"Wow"のほか、"Up All Night"、"7th Heaven"、"Dear Life"、"No Distractions"などの収録曲が明らかになっている。ベックは「楽曲には共通ベースを持ってるものが結構あって、だから、楽曲の中に楽曲があったりとか、あるコーラスが別な曲のブリッジになったりしてて、ぼくの最初の何枚かのアルバムの作り方からそう遠くないものになってるんだ」と「ローリングストーン」誌に語っている。
しかし、現在までにこの新作用にアルバム3枚分のレコーディングは行ったとも明らかにしていて、「グラミー賞受賞(2015年)の後にも半分くらいをボツにして、やり直したんだ。アルバムがそれ自体のアイデンティティーを獲得するまでにしばらく時間がかかったんだよ」と説明している。
また、「ザ・ノウ」に対してはここにきて獲得したある達観について次のように語っている。
「何年もこの仕事をやってきてると、だんだんと実はみんなであるひとつの曲に取り組んできたんだということに気づくものなんだよ」
「やってれば、1曲か2曲くらい、時代に要請に応じた曲も書けるかもしれない。でも、その場合、本当に作曲者が書いたの? ぼくが本当に書いたと言えるの? 実はそうじゃなくて、(聴き手も含めた)みんながそれぞれの役割を果たしてその曲へと結実していったっていうことなんだよ。それがポピュラー・ミュージックの美しいところなんだとぼくは思うよ」
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