追悼:チェスター・ベニントン、彼の描いた光について

追悼:チェスター・ベニントン、彼の描いた光について

タチの悪い冗談であってほしいと思った。だが、マイク・シノダも事実であると認めた。リンキン・パークのチェスター・ベニントンが亡くなった。LAの自宅で、自ら死を選んだという。


ディストーションサウンドがほぼ完全に一掃され、ハイブリッドな聖歌の如く澄み切った最新作『ワン・モア・ライト』のアンサンブルはむしろ、ロックバンド的な方法論では洗い流すことのできないほどのヘヴィネスと向き合うために必要としたものだろう――ということを、僕はアルバム発売タイミングで『ロッキング・オン』誌のレビューにも書いた。自らの闇と向き合う切実なアティテュードゆえに、このアルバムが持つポップ感は今この時代の何よりの「光」となり得たのだろう、と。
だが、その内容が間違いではなかったということを、こんな最悪の形で知りたくはなかった。

リンキン・パークは2017年上半期では唯一ロックバンドとしてビルボード1位を実現し(彼ら自身は自らを「ロックバンド」とはアピールしていないが)、5月からはワールドツアーもスタート。11月の幕張メッセ来日公演での競演に先駆けて、ONE OK ROCKをゲストに迎えてのアメリカ4公演がいよいよ目前――というタイミングでの突然の訃報に、衝撃という言葉が追いつかないくらいに混乱している。

『ワン・モア・ライト』の1曲目に収められた楽曲は“ノーバディ・キャン・セイヴ・ミー”だった。間違いなくキャリアを代表する傑作アルバムを形にしても、チェスターは自分自身を救うことができなかった。それが一番悲しい。今はただ、彼の冥福を祈りたい。(高橋智樹)
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