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    かくも眩しく美しい「闘いの歌」

    リンキン・パーク『ワン・モア・ライト』
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    ALBUM
    リンキン・パーク ワン・モア・ライト
    ファンタジックなアンビエンスと雄大なビート感、開放的なメロディを備えた今作のオープニング・ナンバーに、なぜ彼らは”ノーバディ・キャン・セイヴ・ミー”というネガティブなタイトルを冠したのか。ディストーション・サウンドをほぼ完全にミュートし、過去最高にハイパー&ハイブリッドに研ぎ澄まされたポップなサウンドスケープを繰り広げる楽曲群が、なぜ”バトル・シンフォニー”、”ヘヴィー”、”ソーリー・フォー・ナウ”といったシリアスな言葉で彩られているのか。いや、逆だ。前作『ザ・ハンティング・パーティー』で極限まで炸裂させた、いわゆるロック・バンドな方法論では洗い流すことができないほどのヘヴィネスと向き合うために、そしてそれをよりユニバーサルな訴求力をもって伝えるために、彼らはこの「サイバー・リンキン」とでも呼ぶべきサウンドを必要としたのだろうと思う。

    全10曲・35分22秒という収録内容だけ見れば「リンキン・パーク史上最もコンパクトなアルバム」だが、全編ミドル〜スロウテンポなビート感が描き出す風景はかつてないほどのスケール感と透明度と、それゆえに誰もが瞬時に心を重ね合わせることのできる包容力を備えてもいる。先行公開された”ヘヴィー”同様にキアーラを迎え、今作の中で最も静謐なドラムレスの楽曲”ワン・モア・ライト”を表題に掲げたあたりにも、リンキン・パークの「今」の挑戦精神が色濃く滲んでいる。バンドという自らの在り方そのものをも批評しアップデートした、実にシビアな「闘い」のアルバムだ。 (高橋智樹)
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