なぜENDRECHERIのライブは衝撃的なのか――「楽しさ」と「神聖さ」が共存する堂本剛らのアクトについて

堂本剛のプロジェクト・ENDRECHERIのライブを、8月19日、「SUMMER SONIC 2018」東京公演で初めて目撃して以来、いまだに強い余韻が胸の奥深くを渦巻いている。彼らのアクトはまるで、オールナイトショーのような、外の世界を遮断した密閉空間の中でひたすら音楽の海に潜っているかのような、永遠的で深い深い空間だった。

ENDRECHERIはバンド+ホーン隊+コーラス隊という大所帯で構成されている。そんな彼らがライブで鳴らす音楽は、それぞれの楽器のうねるようなフレーズが腰にくるグルーヴィーなバンドサウンド、そしてそれらに華を添えるホーン隊・ゴスペル風のコーラス隊が印象的なファンクナンバーだ。またそれぞれの楽曲の中で、初めて彼らの音楽に触れるオーディエンスでも踊り出したくなる/シンガロングしたくなるようなアガる&キャッチーなフレーズ、ホーン・コーラスワーク、リズム隊のキメなどが炸裂していて、こちらの体は言わずもがなどうしようもないくらいにノッてしまう。その上ライブでは堂本自身も鮮やかなベースの指弾きや超巧みで細やかなギターソロを披露するもんだから、こちらの視線はステージに釘づけだし、胸はときめく一方だ。「サマソニ」東京公演の彼らのアクトに足を運んだ人の中には、私と同じく初めてENDRECHERIのライブを観るという人が多かったようだけれど、そんな人たちの意識も、曲が進むにつれぐいぐいとステージに引き寄せられていったようだった。

またサウンドと同じく強烈な引力を持っているのが、彼の美声、美声、美声だ。彼は弦のようにたゆたうその声を、終始力強くソウルフルに轟かせ続ける。クールでありながら柔らかさも優美さも情熱もたたえた唯一無二の歌声は、ねっとりとした熱帯的な音と相まってたまらなく色っぽい。まさに「堂本剛ここにあり」といった感じである。しかし印象的だったのは、彼がその美声を全面に押し出すのではなく、あくまでも「楽器の一部」として鳴らしていたことだ。彼の歌やフェイクもうねるような独特のイントネーションを持ち、背後から怒涛のように押し寄せるサウンドに絡みつくかのように響くのである。なんだかその音像には、仲間たちの音と一体化しようとする、彼の意思が込められているような気がした。

だが「サマソニ」のENDRECHERIのライブを体感して一番打ち震えたのは、至る場面で長めのセッションが繰り広げられていたことと、ステージに登場した瞬間から最後の曲を終えるまでの約50分間、MCなし・ほぼノンストップで音が鳴り続いていたことだ。イントロ・アウトロを長編にしたり、それぞれのパートでソロをまわしたりするセッションアレンジで、彼らは持ち時間のあらゆる隙間を音で塗りつくしていた。正直、ここまで音が鳴り止まなかったライブは初めてかもしれない。このかなりストイックで、かつバイタリティが滾りまくっている光景には、畏怖の念を抱かずにいられなかった。

そして堂本自身が、セッションにおいてもこれまた凄まじい人物なのである。美麗なファルセットを惜しみ無く響き渡らせたり、ワウペダルを踏みながらギターを弾き、敬愛するファンクの音色を奏でたり。「サマソニ」のステージで特に刮目させられたのは、彼が楽器隊の指揮を執ったライブ終盤、超長編セッションのシーン。パンチの強いホーン隊の存在も大きく、ENDRECHERIのサウンドはごろっとした音塊のようなのだが、堂本はバックの楽器隊の方を向くと右手をぐっと挙げ、バンドを仕切っていく。そんな片手で巨大な音塊を操る姿に、なんだか彼のカリスマ性を見たような気がして、胸が震えた。フェスというある種アウェーな場でもこんな大セッションを繰り広げ、しかも自らが中心となって楽器を奏でるのではなく、仕切る側にまわるという偉大なユーモアに驚嘆させられたし、何より彼がひとりで巨大な音と対峙する姿がとてつもなく神秘的で、壮観だったのだ。まるで彼が長年積み重ねてきた音楽キャリアや豊潤なセンスのすべてが指揮の一振り一振りに詰まっているように見えたし、自身も音楽の一部になろうとしているのではと思わせるくらいの気迫があった。この光景を見ていた私はもう、完全に放心状態だった。

ENDRECHERIのファンクは実にオープンだと思う。このライブを観るまでファンクを小難しい音楽だと思っていた人も観客の中にはいたかもしれないけれど、彼らはその音楽に宿る純粋な楽しさを、様々な工夫を凝らしながらサウンドと歌だけで一心に発信していた。そして私たちオーディエンスはその面白味を身をもって体感させられ、ノリまくった。しかしそんな親しみやすさを滲ませながら、聴き手を呆然とさせるほどの崇高さを平気で解き放ってくるところが本当にニクいし、そこが観客をさらに虜にするポイント、すなわち彼らのアクトを最高たらしめているものなんだと思う。心地好く踊らせておきながら、とどめはとんでもないワザで圧倒する――それが、堂本剛率いるENDRECHERIのやり方なのだ。

悦楽と神聖さが共存する不思議なスペース。ENDRECHERIのライブはまた出会いたいと素直に思えるほど、衝撃的で、濃密で、幸福な空間だった。(笠原瑛里)
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