あいみょんの“夢追いベンガル”に躍動するもの

あいみょんが、2月13日発売の2ndフルアルバム『瞬間的シックスセンス』から収録曲“夢追いベンガル”のミュージックビデオを公開した。


小気味好いカントリーチックなメロディと愛嬌と毒っ気のある歌詞がアルバム内でも異彩を放っている“夢追いベンガル”。そのタイトルを見てぱっと浮かんだのは、あいみょん自身もファンであることを公言しているandymoriの“ベンガルトラとウィスキー”だった。「ベンガルトラが檻の中で《ただきれいな空がみたいだけなのに》とぼやきながら日常を憂う」という内容の歌詞を陽気なメロディに乗せて歌っている楽曲で、ポジティブなのにふっとセンチメンタルにさせるその曲に何度も心を見透かされたような気持ちになる。そしてこれは勝手な想像なのだが、“夢追いベンガル”を聴いてこのベンガルトラが檻から抜け出した先がふと思い浮かんだ。同曲の主人公は人間(さらに言えば、現代を生きる若者がモデルとして近い)なので、憂いの内容はトラのそれより具体的だしリアルではあるのだが、例え安いウィスキーで丸一日全部無駄にしても無様で皮肉な感情に苛まれても、《明日になって 朝が来た時/見えるものはなんだろう》というシンプルな疑問に帰結するのかもしれない。現状への不平不満や不条理に腹を立てることがあっても、明日は明日の風が吹くではないが、《明日になって 朝が来た時/その時考えりゃいい》のだ。それは「今」への諦めではなく、前に進んでいくための必勝法。平成生まれのカリスマは、自身の感性と表現をもって今の時代により響く形で自分なりの生き方を提示したように思える。

さらに今回のMVは、昨年全国10都市11公演で開催された全国ツアー「AIMYON TOUR 2018 -HONEY LADY BABY-」に密着したドキュメンタリー形式となっていて、映像を観ながら聴く曲が殊更良く響く。快活に笑い、唄い、時に悩みながらもステージの上で脚光を浴びている彼女の姿を見ては、「あぁ、私も自分の日々をどうにか生きていこう」と思える。心が淀んで腐ってしまいそうになる時に、何度でも聴きたく、そしてまた観たくなる作品だ。(峯岸利恵)
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