【本人の言葉で紐解く】宮本浩次ソロはなぜ始まり、どこへ向かうのか?

ソロデビュー曲“冬の花”について

もちろん、サウンドに関しては小林(武史)さんと綿密にやってるし、小林さんのプロデュースっていうところはあるんですけど、方向性とか歌詞とかはある種コテコテにしたというか。自分の持ってる歌謡曲観みたいなものは、自分で考えて作りました。ただドラマの主題歌なので、ドラマの世界観っていうものも自分なりに判断して。切ない曲を作ってくれっていうリクエストをいただいていたんで、それに近づけて、木村佳乃さん演ずる人は、人をだましたりするわけですけど、それだけではなくて、その人なりの孤独との戦いみたいなものもあるっていうことも、台本のニュアンスから受け取っていたものですから。その世界観に近づけつつ、私ももう50代なんで、当然自分の思いというか、作り手の誠意を込めて。今のソロをスタートさせる私の思いも当然、そこには入ってくるわけなんですけど。私が少年時代にラジオにかじりついて聴いていたのは、実はいわゆる歌謡曲だったし。たとえば“ファイティングマン”に、ストーンズビートルズを学んで得た自分なりのロック観があるとすれば、この歌は、自分の持ってる歌謡曲観みたいなもののひとつの形だと思うんですね。世界観の本質的なところは、サビで、ドラマのおかしみもちょっと含めつつ入れました。(『CUT』2019年3月号)

エレファントカシマシにおける宮本のソングライティングは常に、「ロックバンドとしての表現のダイナミズム」と「極上の歌謡メロディメーカー・宮本」のバランスのせめぎ合いでもある。が、「ドラマ主題歌」という舞台設定と物語に添ったテーマ性、そして名匠・小林武史のプロデュースワークによる美麗なサウンドを得ることによって、ロックや歌謡といったカテゴリーから自らを解き放ち、「新たな旅立ちの覚悟」を決然と咲き誇らせることに成功している。
《いずれ花と散る わたしの生命/帰らぬ時 指おり数えても/涙と笑い 過去と未来/引き裂かれしわたしは 冬の花》――脆く儚いイメージを幾重にも積み重ねながら、そこから不屈の生命力を突き上げてみせる“冬の花”のクリエイティビティは、宮本浩次という表現者の存在を改めて時代のど真ん中に深々と刻みつけるに相応しいものだ。



出演CMも続々オンエア、5月2日には一転してエッジィな新曲“解き放て、我らが新時代”を配信リリース……とさらなる快進撃が続く宮本浩次。昨秋からの展開の中でまったく新しい形で再発見され脚光を浴びたその歌と音楽は、僕らの「宮本浩次観」、「ソロアーティスト観」をいかに凌駕し、どのような次元へと発展していくのか。胸躍らせつつ、その軌跡をどこまでも追い続けたい。

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする