King Gnuが“The hole”のMVで示す、決して埋まることのない悲しみとは?

先日King Gnuが公開した“The hole”のMV、あまりにも美しく、しかし残酷な物語だと思った。ラストに男性と女性のキスシーンがあるものの、これはベッドに横たわる女性が1人で思い浮かべている出来事。あまりにも報われない。


“The hole”のMVには男性が2人、女性が1人登場する。男性Aは揺れる心を抱えながら、女性と男性Bの元に通っている。こう書くと何だか三角関係っぽいが、これは「二股」なのかとか、一体どちらが「本命」なのかとか、彼らの関係性に既存のワードをあてがおうとするとどうしても違和感が生じる。

互いの孤独感を埋め合うような関係性を愛と呼び、その欠乏(≒穴)を埋めてくれる相手の存在を恋人と呼ぶのだとしたら、好きなのに、欠乏の種類が一致しなくて、埋めたくても埋められないようなこの関係性を何と呼んだらいいのだろうか。あなたを守りたいのに、どうしてもそれができない悲しみを何と呼んだらいいのだろうか。

このMVを見終えてからだと《愛を守らなくちゃ/あなたを守らなくちゃ》というフレーズが、自分に義務を課しているみたいに聞こえて苦しくなる。“The hole”が収録されているアルバム『Sympa』がリリースされたのは今年1月のことで、そのツアーも4月に終わった。聴き手それぞれが各曲を噛み砕き、一旦消化し終えているであろうタイミングでこのMVを公開し、新たな解釈への可能性を提示してみせたところに、チーム・King Gnuのクリエイティブに対する誠意を感じた。

SNSで多数の考察が行き交っているように、観た人によって解釈が異なるどころか、同じ人でもその時の環境、心境によって違って見えるようなMVだと思う。ぜひチェックしてみてほしい。(蜂須賀ちなみ)
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