このバンドが描いてきた二面性とはつまり、人間が本質的に持つ二面性のことだ。先日別の記事で語らせてもらったように、バンドのソングライター・山中拓也(Vo・G)は自身の内面を抉り取るように歌詞を書いてきた人物である。その言葉は人間の感情の光と闇を容赦なく暴くと同時に、光と闇は容易に反転し得るものであり、善悪で語るべきものではないのだということも語っている。
例えば、“モンスターエフェクト”の《怖い怖い暗い暗い未来期待》という箇所。ポジティブなワードとネガティブなワードが入り混じるこのフレーズには、今直面している課題に不安を抱えながらも、それを乗り越え、道を切り拓こうとする人の心の声そのもののようだ。“Flower”は運命を共にするメンバーについて歌ったバンドへの愛情に満ちた曲であるが、対して“接触”では他者との交流によって自分が失われていくことに対する恐怖が五感を機能停止させていく生々しい描写で表現されている。そしてこの2曲は同じシングル(8thシングル『BLACK MEMORY』)に収録されているものだ。
誰かへの嫉妬をバネに努力した結果、栄光を掴むことだってあるし、誰かを心から愛した結果、これまでにない苦しみを味わうことだってあるだろう。そう考えると、ネガティブな感情は必ずしも悪だとは限らないし、ポジティブな感情が必ずしも善だとは限らない。もっと言うと人間の感情とは、自分以外の人間と接した時に初めて生まれる尊いものであるはずなのだ。例えそれが目も当てられないような形をしていたとしても。
先に挙げた“接触”の最後のサビで歌われている言葉は、このバンドがこれまでやってきたこととほぼ同義だと言ってしまって差し支えないだろう。同曲がベストアルバムDISC2の1曲目という、非常に重要な立ち位置を任せられていることも決して偶然ではないはずだ。
《人を愛し人を憎みそして人間となった/残酷なまでに世界とは 誰かとのもんさ/決して綺麗じゃない/そのままの自分でいい/何を選ぶか それだけは/僕の中に残したいんだ》(蜂須賀ちなみ)