ベーシスト・Keiの急逝から約1年、Fear, and Loathing in Las Vegasは『HYPERTOUGHNESS』という驚異の新境地になぜ到達できたのか?

ベーシスト・Keiの急逝から約1年、Fear, and Loathing in Las Vegasは『HYPERTOUGHNESS』という驚異の新境地になぜ到達できたのか? - 『HYPERTOUGHNESS』発売中『HYPERTOUGHNESS』発売中
2018年に新編成となり、結成10周年イヤーである2019年に突入したところで飛び込んできたベーシスト・Keiの急逝――と、今作についてはどうしても悲しい書き出しになってしまうのだけれど、12月4日にリリースされた新アルバム『HYPERTOUGHNESS』をもう聴いた人はおわかりだろう。ぶっ飛んだタイトル通り、そんな前置きなんて一瞬で吹き飛んでしまうことが。

彼らの音楽といえば、ヘビーネスもエレクトロもポップスも、すべて臨界点ギリギリでかけ合わせたような怒濤の展開とテンションである。1stフルアルバム『Dance & Scream』を聴いた時の衝撃は未だに忘れられないし、もっとすごいのは、キャリアを重ねてなお、そのエクストリームっぷりを薄めることなく、新しい衝撃を与え続けてくれていることだ。

唯一無二のオリジナルであるがゆえに、どこにも属さず、誰にも媚びず、我が道を突き進んできたFear, and Loathing in Las Vegas。常に俺たちは俺たちだ、と己を鼓舞する歌詞、何者にも染まらず、誰も追いつけない勢いに満ちた音。ブレない意志がそのままの濃度で楽曲になっているから、リスナーのフィジカルとメンタルにダイレクトに作用する。いい意味で、バンドの物語やメッセージ性なんて超えた次元に、ラスベガスの音楽の刺激はあった。

しかし今回のあまりにもショッキングな出来事に、リスナーも悲しまざるを得なかった。予定されていたライブやアルバムリリースも延期。重い半年間の空白を経て、彼らがまず戻ってきたのはライブだった。ステージ上で発表された新ベーシスト・Tetsuyaの加入と、その名も「Carry on FaLiLV」という言葉を掲げたツアーを経て完成した『HYPERTOUGHNESS』。

ラスベガスらしすぎるタイトルだけで嬉しい予感に溢れていたのだが、開始1曲目“The Stronger, The Further You’ll Be”を聴いて確信した。完全復活どころか、もっと強く、もっともっと加速して前へ。MVで訳詞が表示された「何があっても進み続けると心に決めろ/人生を楽しめ」というあまりにも強い歌詞と、その意思をさらに燃えあがらせるアグレッシブな楽曲。最高だ、これを待っていた。


そこからはもう、めくるめくラスベガスの宇宙へ飛びこむだけ。ポップなEDMとラップパートが軽快な“Great Strange”、ピアノのイントロから広がる“Karma”、極悪なグロウルで怒りをぶちまける“Thoughtless Words Have No Value But Just a Noise”などなど、今まで同様、その音に身を任せれば彼らと深くつながっていける。極めつけはアルバムのラストを飾る“Massive Core”だ。「これぞラスベガス・スタンダード!」と言うべきダンスナンバーで、先日公開されたMVでも、So(Vo)とMinami(Vo・Key)はパラパラを踊り、暴れ狂うメンバーの上に火花は散るわ、紙吹雪は舞うわ、やりたい放題。ポジティブな感情が耳から目から全身を駆け巡り、気持ちよくて仕方がない。聴いているだけでエネルギーが充填されていく。


そう、彼らがこうして全身全霊で強く生きることを宣言し、どんな悲しみも塗り替えられることを証明してみせたのは、きっと自分たちのためだけではない。同じように、さまざまな悲しみに直面している私たちリスナーのためだ。Minamiの叫びは道を切り開くアジテーターの様相で、Soのハイトーンボイスは未来を照らす光のようにまっすぐ飛んでいく。そのテンションにエンジンをかけられ、音に手を引っ張られ、言葉に背中を押される暖かさ。今のラスベガスには、かつてない圧倒的な「頼もしさ」が宿った。

そんなラスベガスの真骨頂はもちろんライブ。今作をひっさげ、12月31日(火)には「COUNTDOWN JAPAN 19/20」、来年にはアルバムリリースツアーに加えて、スリップノットが主催する「KNOTFEST JAPAN 2020」などのイベントにも出演が決定している。唯一無二のハイパーなタフネスを思いっきり体感すれば、最強のエネルギーがあなたにも充填されるはずだ。(後藤寛子)

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