コロナ禍での緊急事態宣言は解かれたものの、ライブやフェスを実施するハードルは、なお高いままだ。究極の音楽体験であるライブが、無くなるなんてありえない。そう思いながらも、私たちはいま不安に駆られている。かつてのように熱狂し、絶叫し、踊りまくる歓喜の瞬間に戻れるのかと焦燥している。
けれど私たちは、ライブ無しでは生きられない。奪取するためには、どんな苦境も乗り超えられる。この想いを揺ぎなく支えてくれるのが、歴史に刻まれた数々の「伝説のライブ」である。
それは、アーティストが内なるデーモンを一気に吐き出すシリアスな儀式でもあり、観客は「ここにいるために生まれてきたんだ」と歓びで頭が真っ白になるエンターテインメントの祝祭でもある。たとえ何十年経ってもその記憶は劣化するどころかますます鮮烈になりさえするし、体験した者の人生をドラスティックに変えてしまうことさえある。まさに歴史的事件なのだ。
ハンブルクでの長い下積時代から抜け出た1964年のビートルズは、陽性のアグレッシブなパフォーマンスで音楽に革命が起きたことを全米に見せつけた。72年のストーンズは、ブライアンの死やオルタモントの悲劇を克服し、新布陣で鍛え上げたグルーヴでUS西海岸の大観衆を狂喜させた。無敵状態にあった72年のツェッペリンは、ツアーする世界中の都市を破格のエクスタシーに溺れさせた。
迷走していた85年のクイーンは、『ライヴ・エイド』21分の神業的パフォーマンスで起死回生の復活を遂げた。92年、ニルヴァーナはレディングの巨大空間を一瞬で凍りつかせ、やがて数万の大観衆をスリリングなノイズの灼熱へ導いた。そしていま、Z世代の救世主という巨大な運命を引き受けたビリー・アイリッシュが、ファンの大絶叫に包まれながらライブに革命を起こしている。
アーティストの迸る表現衝動、鍛え上げられたスキル、そのとき必然的に選ばれた空間、何らかの物語を求めて集まった観衆、ライブの波動を左右する時代の空気――そんなファクターが渾然一体となった瞬間、「伝説のライブ」というビッグバンが炸裂する。
歴史に刻みつけられた真実をいま追体験しながら、必ずやってくる復活の日に向けエモーションを高めよう――そんな思いのもとにお届けする、72ページ超大総力特集である。(茂木信介)
また、「伝説のライブ」の巻頭特集には、以下のコンテンツが掲載されている。
★ビートルズ★ザ・ローリング・ストーンズ★レッド・ツェッペリン★セックス・ピストルズ★ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ★ピンク・フロイド★クイーン★ニルヴァーナ★レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン★オアシス★エミネム★ビリー・アイリッシュ
★絶対観るべき「伝説のライブ映像」BEST30!
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