年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第2位)

年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第2位)

あけましておめでとうございます!

昨年末から毎日ご紹介している、ロッキング・オンが選んだ2020年の「年間ベスト・アルバム」。年を越してのベスト10発表が続きます。

年間2位に輝いた作品はこちら!
ご興味のある方は、ぜひ本誌もどうぞ。


【No.2】
『THE SLOW RUSH』/テーム・インパラ


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第2位)

大きくうねるグルーヴ、その重い意味

究極のヘッド・ミュージック(註:聴き手を深く思索的な場所へと誘う音楽)として、ケヴィン・パーカーがインスピレーションとしてきたサウンドを無尽蔵に投入し、それを音像に昇華させてきたテーム・インパラ。当然、アルバムごとにインスピレーションも刷新し続け、サイケデリアからエレクトロニックへと微妙に音像の重心をシフトさせてきたわけだが、今回はそんなサウンドにうねるようなグルーヴが全体的に強く打ち出されていて、それがどこまでも心地よく聴き手を包み込んでいく作品として仕上がっているのが素晴らしい。

実際、本作では歌詞的に大きな変化を遂げていて、それは“Instant Destiny”でも繰り返し歌われているように《馬鹿げたことをしようとしている/もう先送りはできない》《マイアミに家を買って結婚しよう》という大きな転機をモチーフにしているからだ。これまでもテーム〜はケヴィンの心境を映し出す音像を生み出してきたわけだが、これほど歌詞が意志的であったことはなかったはずだ。2ndの『ローナイズム』も前作『カレンツ』も、歌われている状況は違っていても、それはどちらも、はてしないほどに所在ない存在でしかない自分というものを確認していく思いを音と融合させたものだったし、どこまでも精巧に作り上げられた音像もまた、そうしたモードや憂いに支配されたものだったのだ。

いってみれば、そんな気分にただ身を預けていく作風だったのが、結婚を機に、改めて自分の経験則を考え直してみるというテーマで、このアルバムは貫かれている。しかし、それはケヴィンのこれまでのキャラクターからも明白なように「よーし、これからは頑張るぞ!」というものではありえない。だから冒頭の“One More Year”のように「1年間一緒にやってきたけれども、もう1年このままやってみようか」という、パートナーや自分自身に向けた提案があり、その後の各楽曲で、自分の性格の原因ともなってきた父親とその死も含めた、自分の現在と過去の検証が行われていくのだ。そこで重要になってくるのが本作を貫く大きなうねりのようなグルーヴで、それは自分の過去、現在、未来と向き合おうとするこのアルバムの持つポジティブなドライブをそのまま体現しているのだ。この陶酔的な音像と感動を誘う歌詞は間違いなくケヴィンの新境地なのだ。(高見展)



「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第2位) - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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