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ベン・サッチャー(ロイヤル・ブラッド)
ベース&ドラムの変則デュオ、ロイヤル・ブラッドが生み出す奇妙な化学反応について考える時、彼らがギター&ドラムの変則デュオだったザ・ホワイト・ストライプスと幾つかの顕著な共通点を持っていることに気づくはずだ。
例えばそれは、ボーカルを担当するベーシストやギタリストがひとりでふたり分の働きを担う過剰なプレイヤーであり、変則デュオの欠落を埋めて余りある技を編み出すズバ抜けたアイデア・マンでもあること。その一方で、ドラマーは極限までシンプルでミニマルなプレイに徹し、手数だけで言ったら0.5人分程度の働きしかしていないこと。
ロイヤル・ブラッドの場合、ギター弦とベース弦をミックスして張ったトリッキーなベースを弾きこなすマイクが、アンプやエフェクターを駆使して分厚く華やか、そしてメタリックなグルーヴを生み出す後ろで、ベンのドラムはほとんど垂直運動の打撃に徹している。必要不可欠なタイミングにしか叩かず、しかも一打一瞬ごとに完結して聴こえるそれは、気功を突いて相手を数メートル吹ばすカンフー・マスターのごときプレイなのだ。
セカンド『ハウ・ディド・ウィ・ゲット・ソー・ダーク?』ではR&Bを感じさせるよりしなやかなグルーヴも生まれたが、ベンのプレイにはほぼ変化がない。むしろ彼のドラムが揺るぎない軸として直立しているからこそ、彼らのグルーヴは自在に変容していけるのだろう。(粉川しの)
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