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ラリー・マレン(U2)
パンク以前の音楽をすべて否定するというポスト・パンクのアプローチを教条的なまでに信奉し、ある時期までそれを貫徹していたというのがU2の初期の歴史だ。しかし、アメリカを目撃していく過程で、ロックンロールとアメリカ音楽の歴史と向き合わなければならなくなり、自分たちなりの歴史的な文脈を模索し始めたというのが、『焔』以降のU2の歩みである。
そんななかで、自分たちの原点を必ず想起させるという、あまりにも重要な役割を担ってきたのがラリー・マレンのドラムだ。
ラリーがすごいのはそのポスト・パンク的な美学をもって今も破格の勢いで叩いてくれることで、U2がどれほど作品に意匠を凝らしたとしても絶対的にこの鼓動は不可欠なのだ。事実、ジ・エッジのギターがここまで心に響くことはこのドラムなしにはありえないと思えることもあるし、間違いなくラリーのドラミングがU2の肝なのだ。
“ブラディ・サンデー”のラリーのマーチング・ドラム的アタックだけでライブの観客全員の血が沸点に達してしまうのも、まさにそういうことなのだ。あるいは、ラリーが腰の手術のため不在がちだった『ポップ』ではドラム・ループの使用が多くなったが“ドゥ・ユー・フィール・ラヴド”のコーラスの背後で鳴るドラム・ループは明らかにラリーのもので、この音がコーラスにリアリティをもたらすところがやっぱりすごいのだ。(高見展)
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