この一掴みの奇跡を噛み締めてゆく――
疾走するリズムで日常を塗り替える最強新曲“ミックスナッツ”完全レビュー
文=小川智宏
昨年9月から続いてきた初の全国アリーナツアー「Official髭男dism one - man tour 2021-2022 - Editorial -」を4月17日、地元・島根の松江市総合体育館で終えたばかりのOfficial髭男dism。そのファイナル直前、4月15日に配信リリースされたのが新曲“ミックスナッツ”だ。現在放送中のアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌として書き下ろされたこの曲、すでに聴いている人もたくさんいるだろうが、またしても驚きと喜びに満ちたヒゲダンアンセムの誕生である。
一聴して耳に突き刺さるポップなサウンド、2周目からは無意識に口ずさんでしまうメロディのキャッチーさ、勝手に体が踊り出してしまうリズムの快感、いずれもこのバンドの真骨頂を詰め込んだ楽曲ではあるが、一方でこの“ミックスナッツ”はここ数年で彼らがいくつも産み落としてきた代表曲たちとは明らかに毛色が違う。“Pretender”や“I LOVE...”や“Universe”、まさに国民的といってもいい支持を集めてきた曲たちのような壮大なスケール感ではなく、密度の高いアンサンブルとタイトなリズムワークによってゴリゴリと道を切り開いていくような、パンキッシュといっていいぐらいにアグレッシブで攻撃的な感覚を持っている曲なのだ。強いて言えばメジャーデビューシングルとなった“ノーダウト”に近いかもしれない。だが、“ミックスナッツ”のヒゲダンはそれよりももっと前のめりで鼻息が荒い、というよりも、より確信犯的にそういう部分を表現しているという気がする。久しぶりのアッパーなシングル、というよりも、ここに来て、インディーズ時代ですら表現されてこなかった、まったく新しいヒゲダンに出会っちまった、というような曲なのである。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年6月号より抜粋)