「以上、私たちBiSHでした!」
――夢の東京ドーム解散ライブ、BiSHという奇跡が「ここにいた」証、その最後の記録
文=小川智宏 撮影=sotobayashi kenta、cazrowAoki、Keiichiro Natsume
ライブ直前、ステージに登場したピンク色のうさぎの着ぐるみ(何者?)が手拍子を煽る。感情をかき立てるような映像とともに、ステージの下からせり上がってきた6人の姿が見えると、その手拍子は怒号のような歓声にかき消された。花火の破裂音が響き渡り、“BiSH-星が瞬く夜に-”が始まっていく。セントチヒロ・チッチ、アイナ・ジ・エンド、アユニ・D……リレーされていくボーカルの合間に東京ドームを埋め尽くした清掃員から大音量のコールが起きる。それを聴いた瞬間、これはとんでもない夜になるぞ、と確信した。メンバーがこの日に懸けてきた思いはもちろんだが、それを上回るのではと思うほどの気合を携えて、清掃員一人ひとりがこの場所に集っている。続いて“ZENSHiN ZENREi”、さらに「東京ドーム、上がっていこうぜ!」というアイナの言葉から“SMACK baby SMACK”へ。ゴリゴリのストロングスタイルで突っ走る序盤、客席から飛んでくる熱量をステージ上の6人は懸命に受け止め、声とダンスで跳ね返していく。リンリンのシャウトにも、ハシヤスメ・アツコとモモコグミカンパニーによるビンタの振り付けにもいつになく緊張感が宿っている。
イントロからどでかい歓声が巻き起こった“HiDE the BLUE”、“FOR HiM”でのリンリンの熱い叫び、“JAM”の先陣を切るモモコの情感豊かな歌、1曲ごとにそれぞれの見せ場を作りながらライブは進んでいく。“デパーチャーズ”ではギターソロでドームがひとつになる。メンバー6人だけではない。バンドにスタッフ、清掃員、全員がスクラムを組んで、このただでさえ特別な1日をさらに忘れられないものにしようと汗をかいている。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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