運命には抗えないんですよ。僕も荒井くんもおがりんも、3人の関係値もより強固なものになった。
ランドマークみたいなものが自然と増えちゃった。3人の思い出、あるよねここにって
あまりにもいろいろなことがありすぎた2023年という一年を締めくくるステージに片岡健太が居ない。客席エリア3万人の胸中にも様々な思いが去来していたと思う。
2月に起きた悲しい出来事を経て、でも春フェスで復活を果たした彼らは、10周年イヤーのファイナルを飾る5月の横浜スタジアムで、降りしきる雨の中4時間40曲という間違いなく日本の野外ライブ史に残る空前のパフォーマンスをやってのけた。
半年以上前から10周年イヤーのハイライトとして設定していたこのキャリア最大規模のイベントは、当初の構想とまったく違う編成、構成、過酷なロケーションの中で、でも最大の輝きを見せてくれた。これこそがsumikaなのだと心の底から感動した記憶が今も脳裏に焼きついている。
大活躍だった夏フェスシーズンを経て、もう絶好調、完全復活のsumikaが快進撃を続けると誰もが思った矢先、今度は片岡を襲った声の不調、「運命」とはどこまで捻くれていて過酷なんだ、と誰もが思っただろう。
僕は運営側の人間なので、大晦日のCDJで片岡が最後にサプライズで登場して“Lovers”を歌うことはもちろん知っていた。でも特にそれを意識せずに前説では、sumikaへのいろいろな思いを語らせてもらった。我々のフェスがコロナで思うように開催できなかった時期にsumikaが共に歩んでくれたことへの感謝の思いもあった。その話が客席を埋めた3万人の心に届いている実感があったからなのだと思うが、急に片岡健太にエールを送りたくなった。突然呼びかけた僕の「片岡コールやってくれますか!」に応えてくれた3万人の参加者。ステージ上から見えたその光景は本当に感動的だった。
そしてついに、3人体制となったsumikaにとって1年ぶりのフィジカル作品『Unmei e.p』がリリースされる。表題曲”運命”はまた実に示唆的なタイトルだが、トリッキーなリズムと軽妙な言葉遊びの波状攻撃が、近年の彼らの真骨頂ともいえるポップチューンだ。そのリードトラックを含めた計4曲は、見事なくらい全方位に四様で、それぞれ最新のsumikaを表している。
今回はあえて3人それぞれに個別インタビューを申し込んだ。いろいろありすぎた結成11年目はそれぞれの視点でどう見えていたのか。なぜ最新作はここまで見事に四方向のsumikaを表現したのか。メンバーに対する思いは──。今だから語るsumikaのドキュメントと新たな覚悟を読んでほしい。
インタビュー=海津亮 撮影=増田彩来
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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