これまでのG overは、ファンキーなロックやジャンプブルース、フュージョンやアシッドジャズなど、さまざまな音楽背景と4人の高度な演奏技術によって、アップリフティングな楽曲や緊迫感の立ち込めるスリリングな楽曲も数多く届けてきた。リーダー・IbukiとNaoの2人が中心になってそれぞれに楽曲制作を行い、最新曲“はないかだ”はNaoによる作詞・作曲。温かくも切ないピアノブギーの曲調がリッチなストリングスアレンジを纏い、悲しい離別を背景にしたストーリーが伝う。
《言葉を紡げずただ見つめているだけ/弾く雨音が耳に届かない》。あたかも川の流れの中で澱み留まり渦を巻く桜の花びらのように、記憶にとらわれた感情はなかなか前に進むことができない。本来ならば人知れず抱え込まれる孤独が、ありありと鮮やかに共有される。“はないかだ”は、Naoの優れたソングライターとしての資質やスモーキーな美声に焦点を絞るようにしながら、あらためてバンドの底知れない魅力を突きつける楽曲にもなっているのだ。ぜひこれまでの楽曲群にも触れて、“はないかだ”の美しさを余すことなく引き出してみてほしい。
文=小池宏和
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』6月号のご購入はこちら