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昨年発表したダンスポップナンバー“drive”が、SNS、各種配信サービスで話題となり、TikTokではMVで披露されているかっこよくも真似しやすいダンスにも注目が集まっているG over。そんな彼らの新曲“はないかだ”は、ブギー調のピアノポップソング。「はないかだ」とは散った桜の花びらが水面に浮かぶ様子を筏に見立てた言葉なのだが、この曲を聴いた時、メロディだけでなく歌詞も含めて川沿いの桜並木で思いにふける昔の自分の姿が浮かんだ。《風に吹かれながら歩く/これからどう生きて行くのか/わからない、明日になるのが/怖くて足を止めた》という冒頭の短編小説の始まりのような歌詞から深層心理に語りかけてくる。楽曲のアレンジも秀逸で、最後のサビだけ壮大なコーラスが入るところなど、失恋して水面を見つめていた男が顔を上げて前へ歩き出す心情の変化をうまく表現している。春は出会いの季節の印象が強いが、この曲を聴いて春に訪れる別れもまた素敵な思い出として心に留めておきたいと思えた。(岩田知大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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