昨年10月から、“Hyper”“Sesame”“Water Carrier”のアニメタイアップ3曲、超満員の日本武道館ワンマンと、破竹の勢いでシーンの最前線に攻め入り始めたKroi。そんな彼らが約2年ぶりに届けるアルバム『Unspoiled』は全14曲収録の渾身の大作だ。……にもかかわらず、このインタビューは、今作がまとまっているか否かの激論から始まる。勝負タイミングのアルバムがまとまっているかどうかわからない、その挑戦的な姿勢こそまさにKroiである。小っちゃい頃に食らった音楽を曲に落とし込んで、これどう？って提案し続けてる。
やっぱ音楽シーン変えられたらいいなって
そしてその議論自体が、このアルバムの素晴らしさを物語っていると思うのだ。今作のサウンドの振り幅はハンパなく、1曲目“Stellar”ではシタールギターの響きとともに余白のあるサウンドを響かせ、“Psychokinesis”では民俗的な打楽器とハードロックが同居し、“Amber”ではラテンのリズムが疾駆する──しかし、アルバムを通して聴いた時に感じる、この統一感。それは内田怜央（Vo・G）の詞の力によるものだろう。メンバーが紡いだ音の風景を反映し、レコーディングの直前まで練られた言葉には、変化への不安がドキュメントされながら、アルバムで最もシンプルな美しさを持つ終曲“明滅”で《繰り返される明滅／振り返られぬ経験／跳ねた水を透かして／逆さまになれ現実》という創作すること、生きることへの本質に辿り着く。《逆さまになれ現実》とは、Kroiがまさにこのアルバムで企てた挑戦のことではないか。
暗喩に満ちた言葉と独自の音楽性で、音楽シーンに新しい価値観を提示する──そんな彼らの大義と野心に溢れた挑戦は、このアルバムでさらに現実をひっくり返すだろう。アルバム完成翌日に実施したこの取材に刻まれた鮮度高い言葉を浴びながら、そのリリースを楽しみに待っていてほしい。
インタビュー＝畑雄介 撮影＝大野隼男
（『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋）
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