デスクトップミュージックが進化し、AIがクリエイティブの世界でも猛威を奮う今、バンドをやる意味ってなんだろう。その問いに対する答えはKroiが7月16日にリリースした新曲“Method”と“Clay”を聴けば自ずとわかるはずだ。新しい王道になるような曲を作らなきゃいけないという使命感があった
まず、“Method”は、TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』第2クールのオープニングテーマ。全世界的に人気を博しているアニメのオープニング、有り体に言えば勝負タイミングに、Kroiは5人の卓越したプレイの軌跡が美しく見えるシンプルな強さのある楽曲を持ってきた。ファンキーでファニーでセンシュアルでディープ。彼らの核にある魅力がクリアに伝わる「新しい王道」と言うべきシングル曲だ。その背後で何やら複雑なことをしているのがカップリングの“Clay”。5人がアイデアを「闇鍋」的に放り込んで作り上げたこの曲はアレンジこそ歪であれど、《音と言葉の間》から掬い上げられたイメージはどこまでもピュアで眩い。
2月にアリーナワンマンを成功させ、8月公開の映画『九龍ジェネリックロマンス』に主題歌“HAZE”を書き下ろし、同月から全国ホールツアーを回って、来年1月には東阪アリーナツアー開催──とKroiは絶えず「自身初」を更新しながら、目標とする「行けるとこまで行く」を体現していく。タイアップに応え、アリーナのキャパで観客を沸かせながら、バンドとしての純粋なクリエイティブを守り抜くことには並々ならぬタフネスが求められるだろう。
しかし、5人の剥き出しのプレイが光る“Method”、5人の「好きなもの」が混ざり合った“Clay”、どちらも今この瞬間の5人にしか語ることができない音としか言いようがなく、それこそがバンドがバンドであることの意味であり、希望だと思うのだ。
インタビュー=畑雄介 撮影=オノツトム
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より抜粋)
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