6月24日にグラストンベリー・フェスティバルでヘッドライナーのU2の直前に出演を果たしたモリッシー。今回のステージでは新曲も披露したが、実はモリッシー、新曲どころか、2009年の『イヤーズ・オブ・リフューザル』に次ぐ新作は完全に書き上がっているのだが、まだ新しいレーベルとの契約にありついていない。
ピッチフォークがこの辺の事情をモリッシーにメールで問いただしたところ、グラストンベリー出演後にモリッシーは返事を送りつけてきたとか。それによれば、モリッシーが現在もレコード契約にありついていないのはどのレーベルからも声がかかってきていないからで、声をかけてきていない理由としてモリッシーはレコード会社というものは新人と契約したがる傾向が強いからで、すでにある程度の業績がついて回ると、たとえ成功しても別な時期の別なレーベルばかりが持ち上げられることになるのでそういうアーティストは避けられるものだという。
「たいていのアーティストというのはその人を世に知らしめた作品や成功をもたらした作品で記憶されているものなんだよ。こうした理由からプレスはぼくについてはザ・スミスの物語に関連したところでだけ書くものなんだよね。そして、ぼくがソロとして1位に輝いたアルバムを3枚も持っていることも、あるいはソロとして25年も充実した活動を続けてきたことはどこでも触れられていないんだ。不思議だね」
つまりレーベルはモリッシーと契約することにどこか面倒臭さを感じて躊躇しているのではないかと訊かれると、モリッシーはおそらくそうなのだろうと答え、「そんなことを憂慮する理由はないはずなのにね。ぼくは屈強な伝統主義者なのだから」と説明している。ちなみに、モリッシーは自分から契約を交渉しにいくようなことはしていないとか。こうしたものはあくまでも「契約していないことが公になった時点で、自分をほしいと思う人が自分を捕まえに来るものだと思って待つものなのだ」という。
あるいはレディオヘッドのように自身の知名度を利用して、自分の手で自分の作品をリリースしていくということも考えていないとか。そうした革新的なアプローチはひとつも望んでいないとモリッシーは語っていて、「ぼくは今も、マーケティングではなくて、人々がぼくの曲を好いているからこそアルバムもよく売れるという夢に今も囚われているんだよ」と語っている。
なお、モリッシーは、インターネットのせいですでに音楽業界とはほとんどなきものになったといってもいいと語っていて、その証拠に誰もチャートに上がっている曲をじっくり聴かなくなっているし、誰もがいっぱしの評論家気取りとなったインターネットの前にプレスもその影響力をすっかりなくしてしまったと説明している。それだけ業界が弱体化したから、その結果として誰も音楽でリスクをとろうとは思わなくなって、音楽に社会的な意見を込めることもなくなれば、個性を発露することもなくなったとモリッシーは語っている。「これは誰もが自分など瞬間的に他人と取り替えがきくと思っている証拠なんだよ」とモリッシーは説明している。
そして、グラストンベリーでのライブについてはこう語っている。「ぼくたちは昨晩、グラストンベリーでライブをやったんだよ。演奏はうまくいったんだけど、雨が身をすくむほどに冷たくて、観客もびしょ濡れで泥だらけだし、辺りは薄暗くて陰鬱で、口を開く度に雨を飲み込まなきゃならなかった。そんな状態ではね、あまり観客から期待できることはないんだよね。もっとも観客はみんなU2を待っていただけなんだろうけど。当然だよね。U2には『スター・ウォーズ』のようなステージ・セットがあるし、北アフリカ沿岸まで明るくしてしまう照明装置もあるからね。とうていぼくには張り合えないよ。とりあえず、ぼくの郵便貯金の残金じゃ無理だね。ぼくが世の中に提供できるのは曲だけなんだ」。
モリッシーのグラストンベリーでの“ファースト・オブ・ザ・ギャング・トゥ・ダイ”の演奏の動画はこちらから→
http://www.bbc.co.uk/programmes/p00hsmp5