スティーヴ・マルクマス、新作『ミラー・トラフィック』をさらに語る

スティーヴ・マルクマス、新作『ミラー・トラフィック』をさらに語る - 『ミラー・トラフィック』『ミラー・トラフィック』

ペイヴメント以降のソロ・アルバムのなかでは最高峰という声がすでにあがっているのが8月17日にリリースされる、ザ・ジックスを率いてのソロ5枚目となるスティーヴ・マルクマスの新作『ミラー・トラフィック』。スティーヴは今回のアルバム・タイトルの意味するもの、楽曲の意図や影響などをスピン誌に語っている。

歌詞やタイトルに関しては機転の利いたセンスで知られるスティーヴだが、今回のタイトルは苦しまぎれに土壇場で決めたと説明していて、今回は詩集をめくったり、タイトル案を書きつけては言葉を入れ換えたりとかなり四苦八苦したそう。スティーヴはタイトル案についてはバンド、元のバンド仲間のデヴィッド・バーマン、そしてレコード会社と3重にチェックをしてもらっているというが、レコード会社のチェックではちょっと外した感じの候補がかなり落とされたという。

「タイトルの候補のひとつにはLAガンズというのもあったんだよね。でも、やっぱり訴訟とかになるかなってことに落ち着いたんだ。でも、このタイトルだったら、MP3音源とかだとバンド名とアルバム名とかがあべこべになって混乱が起きると思うし、ちょっとそういうことを期待してたんだよ。ただ、iTunesで曲を買う人の数が膨大なものだっていうことを忘れてたんだよね」

すでに100万曲もの曲はできているがあいにく歌詞が100万曲分も揃っていないというスティーヴの作詞へのアプローチについては、穴埋め問題のように言葉を当てていくことだとスティーヴは説明している。意外と正攻法で、音とよく合う言葉と語呂のいい言葉を探しているだけで、際立ってしまうような言葉はなるべく使わないようにしているのだとか。実際、今度の新作収録曲でも一部歌詞を書き直したものもあったが、どうもしっくりこないので最初の形に戻したとスティーヴは語っている。「プレッシャーを受けたりすると、なんか意味のあるようなことを言った方がアーティストとしてもより優れているように思いがちになるんだよ。でも、そうすると大発言となって浮きまくるから、結局、音としてよくなくなるんだよね」。

その一方で“Senator”(上院議員)という曲ではフェラをしたがる政治家について歌っているが、この曲の真意について訊かれるとスティーヴはこれはメタファーであって、この人物は自分でも、あるいはバンドのボーカルでも、誰でも構わないのだが、とにかくなにかにしがみついているやつのことなんだと説明している。「自分の地位にしがみついて、得票率のためにはなんでもするようなやつのことだよ。そのためにはどんなことだって公約にしてみせるんだからさ。民主党だろうが、共和党だろうが、とにかく議員会館からは絶対に出たがらないんだから」。

なお、スティーヴは楽曲の1部についてそのインスピレーションとなったもとを説明してくれているので追っていくと、まず1曲目の“Tigers”はニック・ロウ的な70年代UKロックとのこと。2曲目の“No One Is (As I Be)”はスコットランドのバート・ヤンシュ的フォーク調で、ややベックっぽいとのこと。一部で聴けるようになっている3曲目“Senator”については70年代クラシック・ロックと70年代パンクが混ざった感じで、ガイデッド・バイ・ヴォイセズ的だとか。4曲目“Brain Gallop”はオーストラリアのダディ・クールというバンドの地元ナンバーワンに輝いた“Eagle Rock”がインスピレーションになったとか。この曲を解体してそこに初期のシン・リジィのリズムを入れてみたという。そして12曲目“Forever 28”はホール・アンド・オーツ的なメロディを聴かせるポップ・パンクだとか。

なお、9月20日からバンドは北米ツアーに乗り出すが、この際、ドラムのジャネット・ワイスは同行できなくなり、今回の新作での作業が当面は最後になるとスティーヴンは認めている。問題はジャネットがワイルド・フラッグというバンドも掛け持ちしていて、ワイルド・フラッグが成長中のバンドでかなり多忙なので、協議の末、やめてもらうことになったとか。ジャネット的には今度の新作をものすごく誇りに感じていたそうなので口惜しい決断になったという。後任にはザ・ディセンバリスツのジョン・モーエンが決定している。

そして、ペイヴメントの再結成についてスティーヴは今こう振り返っている。「まあ、ツアーの最後の頃は疲れてたし、オーヴァーワークだったし、ちょっとガタついてたよね。でも、テンションが張り詰めすぎるっていうことはなかったよ。だから、楽しかった。なんか成り行きにすべて任せたっていう感じで、ほんとにあっという間の1年だったな。アメリカじゃ1都市1回きりのライブが多くて、最近の成功したバンドはみんなこういうやり方らしいんだよね。それとフェスからフェスへと渡り歩いてたから、全員いつも時差ボケ状態で、それであんまり詳細を憶えてないんだよね。でも、みんなとまた一緒にいられてよかったよ。なんていうのかな、野郎友達とまたつるんだって感じで」。

なお、現在、オレゴン州ポートランド在住のスティーヴだが、新譜リリースとツアー開始の合間に家族でベルリンへ引っ越すそう。「なんかクレイジーな思いつきなんだけど」1年間ベルリン暮らしを試してみるそうだ。

『ミラー・トラフィック』のトラックリストは以下のとおり:
1. Tigers
2. No One Is (As I Are Be)
3. Senator
4. Brain Gallop
5. Jumblegloss
6. Asking Price
7. Stick Figures In Love
8. Spazz
9. Long Hard Book
10. Share The Red
11. Tune Grief
12. Forever 28
13. All Over Gently
14. Fall Away
15. Gorgeous Georgie
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