ブルース・スプリングスティーン、サウス・バイ・サウスウェストでの講演でエルヴィスやドゥーワップ、ウディ・ガスリーについて語る

ブルース・スプリングスティーン、サウス・バイ・サウスウェストでの講演でエルヴィスやドゥーワップ、ウディ・ガスリーについて語る - 3月21日発売『レッキング・ボール』3月21日発売『レッキング・ボール』

3月21日に新作『レッキング・ボール』をリリースするブルース・スプリングスティーンがテキサス州オースティンで開催されているサウス・バイ・サウスウェスト・フェスティヴァルでフェスティヴァルの基調講演を行った。

予定の正午より35分遅れて登場したブルースは次のように切り出したという。

「おはようございます。なんでみんなこんな早起きしてるのかな。お昼ぴったしにやったんじゃこのスピーチもさほど重要なものともいえないし。こんな時間に起きてるまともなミュージシャンなんていやしないだろう」

それから1時間近く続いた講演でブルースは自身の受けてきた影響について話を続けたが、合間にアコースティック・ギターに手を伸ばし、弾いてみせる場面もあったという。そうした実演でブルースはたとえば、アニマルズの"朝日のない街"を披露したが、これにはアニマルズのエリック・バードンが「スプリングスティーン、こちらもオースティンにいるけど"朝日のない街"をやったと聞いて光栄に思っています」とツイートしたとか。

講演は「俺がギターを弾くようになった時、ロックンロールにはまだ10年しか歴史がなかった」という話から始まり、評論家レスター・バングスがエルヴィス・プレスリーの死の際に書いた、エルヴィスは誰もが偉大だと賛成する最後のアーティストだったという内容に記事に触れ、音楽の多様性を次のように力説したという。「人間の表現の純粋さというのはなにもギターに限られるものではないし、正しいやり方というものもなく、ただやるしかないんだ。俺たちは正統性というものがまかり通った後の時代を生きているわけで、自分の音楽の力強さと目的こそが最も問われるものなんだ」。

また、自身の音楽の素性については1966年に『エド・サリヴァン・ショー』でエルヴィスを目撃したことを次のように語っている。「エルヴィスは最初の21世紀的人物だった。その後のセックス革命や公民権運動を先取りした先駆的存在だった。エルヴィスはアメリカ人、そして人間としての新しい生き方を提示してくれたんだよ。この新しい遺伝子はもはや元に戻すことができなかったんだ」。

エルヴィスの細身のパンツのかっこよさに触発されてブルースはギターを買い求め、エルヴィスがギターを肩から下げて腰を回す動きを「鏡で何度も何度もやってみせたもんだったよ……この期に及んでいまだにやってるけど、みんなもやってるよね?」と爆笑を買ったという。

さらにロイ・オービソンについては「新しくできたガールフレンドに『愛してるよ』と言った後に続く恋愛的黙示録を描く達人」と説明し、さらにドゥーワップのセクシーさについては高校時代のダンス・パーティの帰りに性欲が極度に高まってしまって感じたどうしようもない切なさにたとえてみせた。

ザ・ビートルズとフィル・スペクターについては絶賛してはフィルの楽曲のひとつをスキャットのみで歌ってみせた後にアニマルズの"朝日のない街"を披露。原題が「俺たちここを出ていかなきゃ(We've Gotta Get Out Of This Place)」というものであることと、特に初期の自身の楽曲のテーマ性を引っかけて「実は俺が書いてきた曲はすべてこれなんだよな」と説明してみせた。また、セックス・ピストルズの登場まではアニマルズこそがロック史上最も不埒なバンド名だったと解説し、自身の"バッドランズ"のリフの一部を紹介するとこれもアニマルズをネタにしたものだったと明かした。「若いみんなには聴いてもらいたいんだけど、うまくパクるっていうのはこういうことを言うんだよ」。

また、『闇に吠える街』がパンク・ロックに触発された作品だったと明かすと、モータウン、ハンク・ウィリアムズ、ジェイムス・ブラウン、ボブ・ディランへの愛着についても語った。さらに、コロンビアと初めて契約した時、新しいボブ・ディランとして拾ってもらったのだと語り、「ただ、当時は古い方のディランもまだ30だったんだよな」と説明してみせた。「アコースティック・シンガー・ソングライターとして契約してもらったんだよ。だから、羊の皮を被った狼だったわけだ」。

話を締めくくるにあたってブルースは会場をいざなって今年生誕100周年を迎えるウディ・ガスリーの"わが祖国"を合唱したが、「俺はウディ・ガスリーのようになりたいとは一度も思ったことがないよ」とも語った。「スターであることの贅沢や楽しさに目がくらんでたからね」。


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