この映画にはセリフがない。
しかし無声映画のテイストとも違うし、喋らない静かな人物たちによる物語というわけではない。
喋ってもおかしくないシチュエーションはたくさんあるのだが、あえて俳優たちは言葉を使わずに心理や情動を表現している。
それによって人間という生物の狂気、暴力性、変態性、そして愛しさーーありのままの生態が、まるで動物のドキュメンタリーでも見ているかのように、身も蓋もないくらいのクリアさでわかるのだ。
キム・ギドクしか絶対に踏み込まないであろう映画表現の極北地点に到達している作品。
公開は12月6日。(古河)