アニメオリジナル作品の実写化ということで、原作を愛する人がたくさんいる作品だからこそ放送前から批判的な声もあがっていたけれど、実際に放送されたドラマを観て、僕は作り手の人たち、演じている人たちの原作に対する愛情が溢れていて、とても力の入ったドラマだと感じた。
原作を観ていた人にとっても名シーンの数々を改めて思い出しながら楽しめるような工夫がなされていたと思うし、原作を知らない人にも『あの花』の物語としての素晴らしさはかなり伝わる内容になっていたと思う。
もちろんアニメでないと伝わらない繊細な表現もたくさんあるし、カットされたなかにも無数の名シーンや名セリフがあるけれど、一番大切な、原作が持っている鮮烈なエネルギーのバトンは受け継がれているなと――要するに放送から4年以上が経った『あの花』だけれど、この作品の衝撃は、けして消費されることなく未だに純粋な形で広がり続けているということに尽きるのである。
もし今回の実写化で『あの花』を知って、まだ原作アニメを観たことがないという人は、観るのに「遅い」も「早い」もない普遍性を持っている作品なので、今からでもじっくり最初から最後まで観てほしい。
そして、そんな『あの花』の主要スタッフである長井龍雪(監督)、岡田麿里(脚本)、田中将賀(キャラクターデザイン・総作画監督)が再結集して作りあげたオリジナル劇場作品が、9月19日に公開された映画『心が叫びたがってるんだ。』である。
『あの花』の原作クレジットが物語中に登場する幼馴染たちのグループの呼び名でもある「超平和バスターズ」だということは知られているけれど、今回の『心が叫びたがってるんだ。』の原作クレジットも「超平和バスターズ」。
もちろん登場人物は、まったく違う。
しかし長井龍雪、岡田麿里、田中将賀がそろって作り上げる作品にはいつも、3人のまさに超平和バスターズの秘密基地のような繋がりがなければ生まれないものがある。
それを象徴しているのがこのクレジットだと言ってよいだろう。
僕は今回、この映画に「確かにそこにあるのに、 形を持てずに右往左往している『今』という時代の声。その声に形を与えて聞かせてくれるのが、この映画」というコメントを出した。
この3人が、その秘密基地のような繋がりから生み出す物語だからこそ、「絶望的なものは観たくない」けど「ぬるいものも観たくない」、そんな現代の人々にとっての「本当に観たいもの」になるのではないかと僕は思っている。
ということで詳しくは、現在発売中のCUTに掲載している『心が叫びたがってるんだ。』特集を読んでほしい。
長井龍雪×岡田麿里×田中将賀の鼎談は、企画のスタートから作品の本質に至るまで他誌では決して語らないところまで踏み込んだ内容になっているし、主人公・成瀬順役の水瀬いのり(ドラマ『あの花』にもカメオ出演していました)と仁藤菜月役の雨宮天は撮り下ろし写真ありで登場、それぞれの役と共に過ごした極めて深い時間を踏まえたグッとくる話を語ってくれています。(古河)