2月16日(金)に公開される『グレイテスト・ショーマン』は、近代的なサーカスの創始者として知られ、19世紀半ばに現代の「ショービズ」の概念を生み出した偉人、P.T.バーナムの実話を基にしたミュージカル・ドラマ映画だ。
ハリウッド産のミュージカル映画というと、たとえば2012年の『レ・ミゼラブル』のように、すでに知名度のあるブロードウェイの人気作を映画化するパターンが圧倒的に多いけど、本作の物語は「完全オリジナル」。劇中に登場する11曲のミュージカル・ナンバーもすべて「書き下ろし」となっている。
全米では昨年の12月20日に公開されると、口コミでどんどん人気が広がり、これまでに興行収入1億ドルを超えるヒットを記録。この数字だけでもすごいが、さらに特筆すべきなのは、公式のサントラ盤アルバムがとにかく売れに売れまくっていること! 全米/全英/全豪の音楽チャートでの1位にくわえ、iTunesのアルバム配信ランキングでは、なんと全世界65ヵ国で1位の座を獲得。ここまで全世界的に売れまくったサントラ盤は、近年だと『アナと雪の女王』('13年)くらいだ。
単なるヒット映画という域を超え、もはや世界の音楽ファンにとって「一大イベント」的な盛り上がりになっている映画『グレイテスト・ショーマン』。その音楽的な魅力はどこにあるのか。待望の日本公開を直前に控えた今、3つのポイントから検証してみよう。
1.歌&ダンスの達人だけを集めた、こだわりのキャスト
『グレイテスト・ショーマン』の主演は、『レ・ミゼラブル』でのジャン・バルジャン役など、ハリウッド映画界きってのエンターテイナーとして知られるヒュー・ジャックマン。そもそも今回の映画は、ジャックマンが「どうしても作りたい!」と、10年近く前からずっと温め続けてきた企画で「全曲オリジナル」という構成にこだわったのも、彼の意向だったという。
主演だけではない。もともと『ハイスクール・ミュージカル』(06年)でブレイクしたザック・エフロン、ソロ・シンガーとしてCDデビューもしているゼンデイヤ(『スパイダーマン/ホームカミング』)、普段はブロードウェイの舞台女優として活躍するキアラ・セトルなど、本作に出演しているキャストは、みんな「歌って踊れる」俳優ばかり。ミュージカル・シーンの撮影リハーサルに10ヵ月も費やしたというエピソードからもわかるとおり、とにかく「歌とダンスの完成度」を最重要テーマに据えて作られた映画なのだ。
2. 『ラ・ラ・ランド』の作詞作曲家コンビが「全11曲」フル担当
『グレイテスト・ショーマン』の劇中で登場するミュージカル・ナンバーは、全部で11曲。そのすべてのナンバーを本作のために書き下ろしたのは、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールのふたり組だ。
彼らの名前を世界の音楽ファンの間に知らしめた名曲といえば、人気映画『ラ・ラ・ランド』の挿入歌だった“City Of Stars”。あの美しい口笛のイントロを聴いただけで、「思わず夜空を見上げたくなっちゃう!」という人もきっと多いことだろう。
来年2019年には、ディズニー映画の実写版『アラジン』の音楽を手がけることも決まっているパセック&ポールのふたり。今のハリウッド映画界で、間違いなく、もっともノリにノッている作詞作曲家コンビだ。
3.キャッチーなのにド迫力! 劇中ナンバーの圧倒的なエモーション
そんな名コンビが手がけた『グレイテスト・ショーマン』の劇中音楽は、古典的なミュージカル劇のダイナミックな「ド迫力感」と、最新ダンス・ポップに通じる「キャッチーなサビ」という、本来は“別世界”であるはずの2つの要素が見事に融合されている点がいちばんの特徴。歌い上げ系の壮大なバラードから、EDM風なドロップ効きまくりのアゲアゲ・ダンス曲まで、全11曲が「満腹感」たっぷりの仕上がりとなっている。中でも、海外での公開時に熱狂的な支持を集めたナンバーが“This Is Me(ディス・イズ・ミー)”だ。
ちょっと“変わり者”のサーカス団員たちが全員参加で贈る、この感動的なナンバー。名シンガーのキアラ・セトルによる熱唱&パフォーマンスは、ただただ「圧巻!」のひとこと。ありのままの「自分らしさ」を讃える歌詞も心に突き刺さってきて、映画全体のポジティブなメッセージを象徴する名曲と言っていいだろう。
3月4日(現地時間)に発表される第90回アカデミー賞の「最優秀歌曲賞」にもノミネートされており、そちらの結果も合わせて注目だ。
※映画『グレイテスト・ショーマン』は、2月16日(金)より全国ロードショー。公式サントラ日本盤は、ワーナーミュージック・ジャパンより発売中。映画の公開に先がけ、“This Is Me”の登美丘高校ダンス部“カバー・バージョン”も絶賛公開中!(内瀬戸久司)