ブーメランズ

ブーメランズ

12〜13年くらい前。取材の後や、ライブの打ち上げなどで、
何かっちゃあ曽我部恵一と呑んでいた頃の出来事です。

その日も、下北沢で撮影の後に呑んでいたら、酒が回ってもっとにぎやかさを
欲し始めたらしく、曽我部が「誰か呼びましょう!」と言い始めた。
しかし、まだ携帯電話がなかった時代……いや、あったけど、
まだみんなが普通に持つようになる前であり、友人のバンドマンたちに
かたっぱしから電話したものの、捕まって下北まで来たのは、
フラワーカンパニーズ竹安堅一のみ。

で、曽我部はどうしたか。店を移るので歩いている時、道ですれ違った、
楽器を持った、練習帰りのアマチュアバンドと思しき男の一団に、
いきなり「ねえ、一緒に呑まない?」と話しかけたのです。

「うわ! サニーデイの曽我部だ!」と驚く彼らを居酒屋に連れて行き、
「ねえ、どんな音楽が好きなの? どんなのやってるの?」と、
質問攻めにする曽我部。

大学生で、バンドを組んだばかりで、楽器も始めたばかりだという。
ストーン・ローゼズとか好きで、そのコピーをやっているそうだ。

曽我部「バンド名は?」
大学生「まだ決めてないんです」
曽我部「そうなんだ。じゃあ付けてあげるよ。
ブーメランズ! ブーメランズってどう?」
大学生「はあ……ブーメランズですか」
曽我部「すっごいいいじゃん! ライブとかはあるの?」
大学生「いや、まだやったことないんです」
曽我部「じゃあ俺らのライブのオープニングで出ない?」
大学生「え、ええっ!?」

これ、おそろしいことに、数ヵ月後に実現してしまった。
超満員の下北沢CLUB Queにて、当時人気絶頂だったサニーデイ・
サービスのオープニング・アクトとして、ブーメランズはデビュー・
ライブを飾ったのでした。
4人ともガチガチだった。あたりまえだけど。
そして、確かに、いかにも初心者な演奏だった。

しかし、当時も思ったけど、今考えても、夢のような話であると同時に、
むちゃにもほどがある話だとも思います。

一昨日、渋谷クラブクアトロで、時にお父さんのような、時に大学生のような、
時に小学生のような顔でいきいきと歌い続ける曽我部さんを観ていて、
なぜかふと思い出したのでした。

で。
その後、ブーメランズがどうなったのかは知らないし、きっと、今は
普通に働いていて、家族もいたりすると思うが、あのわけの
わからない体験が、彼らにとっていい思い出になっていればいいなあ。
と思いました。
で、家で晩酌しながらテレビ観ていて、日産セレナのCMが流れたりしたら、
奥さんや子供に「お父さんな、この歌を歌ってる人と、
一緒にライブやったことあるんだぞ」とか言ってたら、
もっといいなあと思いました。

暗い写真ですみません。
一昨日のライブのポスターです。
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on