津村記久子の新作

津村記久子の新作

書店で、高橋源一郎先生の連載を読むため「群像」2月号を
買おうとして、手にとって、隣の「文學界」2月号を見たら、
表紙に「津村記久子」とあったので、「お!」と購入。

「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」というタイトルの、
読みきりの、6ページの短編でした。
タイトルどおりうどん屋の話で、ほんとに日常的な、
実際にどこにでもありそうな、小さな事件のことを
書いた作品なんだけど、すごくグサッとくるというか、
とても強いインパクトを食らいました、読んで。

昔、ジャパンで真心ブラザーズにインタビューした時に、
村上春樹がエッセイで書いている、
「小確幸」――「小さな、確実なる、幸せ」という造語が
好きだ、ということを、YO-KINGが言っていたのを覚えている。
この本で描かれているのは、その反対のもの。
いわば「小確不幸」。
小さな、確実なる、不幸。または絶望。あるいは断絶。

戦争がなくならないとか、そういうでっかい不幸ではなく、
日常のそこらじゅうに転がっている、小さな、でもゆるぎない不幸や絶望。
そこへのフォーカスのあて方が、
津村記久子はつくづくロックだなあと思う。
あと、その小さな不幸が、はてしなくでかい規模の
不幸へつながっていることを表す描き方も、ロックだなあと思う。
中村一義が好きだ、と前にインタビューした時に
言っていたが、それがなんかとてもよくわかる感じ。

って、「ロックだなあ」って、ロックってはたして
そういうものなのかどうか、捉える人によって違うと思うので、
「つくづくリアルだなあ」でもいいんですが。

とにかく、よかった、という話でした。
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