伝説の一夜となった横浜スタジオアム公演から約5ヶ月、10月1日にリリースされた楽曲"Phoenix”は、《恐ろしい朝も手繋いで/いきますか さあ いきますか/イカれた世界の弩真ん中を》と力強く、声高らかに大きな一歩を踏み出したことを感じさせる1曲だ。
さらに、《12の3でいっちょ上がり/せーのでもって思い通り/行こうか心躍る先へ》と締められるサビ、そのあと続く《ラララ》でシンガロングを誘う完璧な構成――不死鳥を意味するタイトル通り、何度でも立ち上がり、歩み続けるという不屈の精神と覚悟がその歌声から、サウンドから、歌詞から存分に感じ取ることができる。
そしてその思いは、楽曲を聴いた瞬間から我々リスナーの心の中にも確かに宿るのだ。グッと拳を握りしめたくなるほどに。
それがつまり、思いを届けるということなのだろう。間違いなく今後のsumikaの重要なライブアンセムとなる楽曲である。
そして、12月16日には"シュガーソルト”、22日には“マシロ”と立て続けに新曲がリリースされている。
"シュガーソルト”は、「ZIP-FM 30th ANNIVERSARY SONG」として書き下ろされた楽曲。《塩じゃない/砂糖じゃない/人の甘み》というフレーズがいかにもsumikaらしく、冷めた気持ちと温まる心、笑いと涙、勝ちと負け、理想と現実――人生が常にそんな表裏が一体となってできていることをいつだって歌ってきた彼らだからこそ溢れる感情に満ちあふれていて、それでいて口溶けはいたってまろやか。
タイトルからして今年3月にリリースされたsumika[camp session]名義での1st Mini Album『Sugar Salt Pepper Green』を想起するが、[camp session]での彼らのスタイルのような、焚き火を囲んでいるような「あたたかみ」のある1曲だ。
続く“マシロ”は、ゲーム『ポケットモンスター』を原案としたオリジナルドラマ『ポケットに冒険をつめこんで』エンディングテーマとして書き下ろされた楽曲。
タイトルはドラマの主人公の地元であり物語の始まりの街である真白町(ましろちょう)にかけたものとなっていて、サウンドにもところどころ『ポケモン』を感じさせる電子音が散りばめられている。
こういった遊び心もsumikaの得意とするところであり、AメロBメロでの先の見えない展開と相反して、《マシロマシロ/まだ見ぬ先へ/山も海も個性と旅へ》という歌詞もメロディもシンプルでストレートなサビがグッとくる。
この3曲を通してsumikaが歌うのは、《行こうか心躍る先へ》("Phoenix”)、《許し生きていこう》(“シュガーソルト”)、《まだまだ/ではまた》(”マシロ”)という未来への確かな希望と祈り、そして自らへの覚悟と信念である。彼らの歌を聴くと、待ち受ける未来がどうしようもないほどに明るく思えてしまう。そんなマジックを平然と起こすのが今のsumikaなのだ。(橋本創)
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sumikaの最新曲"Phoenix”、"シュガーソルト”、“マシロ”が繋ぐ確かな未来
2023.12.25 17:00