「この世はクソだ」という崖に立ちながら歌う希望しかない歌──anoの1stアルバムリリースツアーを観て

「この世はクソだ」という崖に立ちながら歌う希望しかない歌──anoの1stアルバムリリースツアーを観て
あのちゃんの活躍ぶりについて言い表すときに毎回書いているような気がするのだけれど、活動の幅が多様化していて、しかもその多様化っぷりが日に日に極まっている昨今。今夜開催されたanoの1stアルバムリリースツアー「猫吐極楽つあー 〜何&卒よろしゅう〜」では、それでもやっぱりライブでしか観ることができないあのちゃんがいた。

ポップもロックもいろんな角度で見せるアルバム『猫猫吐吐』をそのまま舞台に具現化するように、1曲1曲の表現の幅はますます広がっていて、ライブパフォーマンスはまるでミュージカルを観ているような感覚になるほど洗練されていた。けれどそれは決して「演じてる」みたいなものなんかじゃなくて、どの曲にも生身のanoがちゃんといて──きらびやかな表現に光が増すのに反比例するように、時に鬼気迫るような叫びが鳥肌が立つほど剥き出しになる瞬間があって、息をつく暇もないライブだった。

MCについてふれるのは野暮だけれど、「この世はクソだ」という崖に立ちながら歌うその歌が、今日集まった人すべてに届くポジティブな言葉で終わるというのが、どんなアーティストよりも深い優しさと誠実さを持つanoの真髄だなと思う。(畑雄介)
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