石橋 凌のソロライブ「表現者」〜我 歌う 魂こがして〜を観に、土曜の夜に東京キネマ倶楽部に行ってきた。
まるで短編映画のような“カクテルトゥナイト”のミュージック・ヴィデオ(これもキネマ倶楽部で撮影されている)が流れるオープニングで早くも会場を大人の色気と遊び心で満たした後、
バンドメンバーに続き石橋 凌さんが登場。コート姿&ハットを目深に被った姿はキネマ倶楽部にぴったりで、映画の世界から飛び出してきたようなムードがある。
元ルースターズの池畑潤二さんをはじめ百戦錬磨のバンドメンバーたちと濃密なグルーヴを紡ぎつつ、
RCサクセション時代から親交のある梅津和時さんを招き数曲プレイ。さらにホーンセクションも交えた華々しい本編ラストなど圧巻のステージの連続。
凌さんの熱い人柄&サービス精神も全開だ。
『bridge70号』のインタヴューでソロ第一作であるアルバム『表現者』について、「ロックっていうよりも音楽に立ち返りたかった」と言っているとおり、
ロックのみならずブラックミュージック、ニューウェーヴなど自身のルーツにある様々な音楽を咀嚼した音楽はとても豊か。
ARB時代の名曲“喝!”にこめられた社会的・政治的メッセージも、
ソロで「諦めない」という意思を自分のために歌ったという“我がプレッジ”や、出会いや縁に感謝する“縁のブルース”も、
すべて「今」の石橋凌の表現として生き生きと鳴り、
同時代を生きる人々を鼓舞する力強いメッセージを放っていた。
アップテンポの曲に乗せて「NO MORE WAR!」「NO MORE ピカドン!」というシンガロングを巻き起こした反戦・反核の歌、“PIKADONの詩”が放つ熱いエネルギーも凄まじかった。
とにかく印象的だったのは、開演前、心のどこかにあった「シンガー=石橋 凌」のステージを観るという意識が、「あ、それは違う」とすぐに気づかされたこと。
ステージで歌う凌さんの姿には、人間の心や世界観を体現する「役者」の姿も、強いメッセージを発する「詩人」の姿も溶け込んでいたからだ。
アルバムタイトルに掲げた「表現者」という言葉の意味をまざまざと体感した夜だった。
写真は、インタヴューを掲載している「bridge70号」。絶賛発売中です。(福島)