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    NICO Touches the Walls、”TOKYO Dreamer”の「強さ」についてのコラム的な文章(後編)

    NICO Touches the Walls、”TOKYO Dreamer”の「強さ」についてのコラム的な文章(後編)

    続きです。

    NICOはきっとそのことに気づいたんだと思う。
    武道館のステージに立ち、「俺たちって武道館が似合うバンドなんだ」と笑いながら言う4人の姿。
    その自信に満ち溢れた姿は、強い「自分たち」を手に入れることの重要さを教えてくれた。
    曲にインプットした「強さ」を生かすことができるのは、結局のところ自分たちのモード次第なのだ。
    インタヴューには「今は、過去に作ったどんなボールもストレートとして投げられるんです」という発言があるが、それはつまり、そういうことだ。

    まったくもって不器用なバンドである。
    だってそうだろう。
    そもそも、光村が10年前に”TOKYO Dreamer”を作ったとき、「強く」ならないといけないと気づいていたわけだから。
    曲がそう教えてくれていたのだから。
    そして、そんな最高に「強い」曲を、すでにNICOは手に入れていたのだから。

    だが、そのとき「いい曲ができた!」と喜々として、無邪気に歌わなかった――いや、「今のおれは歌えない」と感じた光村の感覚はとても不器用で、だからこそ誠実だと、僕は思う。

    「この曲を歌える自分にいつかなるんだ」と思ったNICO。
    そして、ついに”TOKYO Dreamer”を歌えるようになったNICO。
    そのふたつのNICOは実はとても近くにいて、しかし彼らはその「近く」に約10年もの時間をかけた。
    その歩みこそが僕たちがNICO Touches the Wallsを愛すべき理由であり、4人だけの「強さ」なのだと思う。

    最初のサビで《孤高の戦いが この街を生きていく術なんだ》と歌われた歌詞は、次のサビでこう変わる。

    《孤高の戦いは いずれこの夢を叶えるんだ》

    この言葉を「自分」の歌として歌えるようになったNICO Touches the Wallsの歩みはまだまだ続いていく。
    そう、本当のお楽しみはここからなのである。

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