今年のカンヌ映画祭で公開されて以来、ロバート・パティンソンが、キャリア最高の演技を見せていると評判だった『グッド・タイム』が日本でも絶賛公開中だ。予告編はこちら。
https://youtu.be/23aLHIfh5CM
この映画で、もうひとりのキャラクターと言える位重要な役割を演じているのが、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが手がけたサントラだ。観ている自分の心臓の鼓動に合わせるように鳴り響くのだ。そして、最後にその緊迫感をすべて包み込む様に、または洗い流す様にかかる映画の最後のイギー・ポップとの曲”The Pure and the Damned”が最高。MVはこちら。
Oneohtrix Point Never - The Pure and the Damned ft. Iggy Pop
この曲のタイトルは、「純粋で救われない奴ら」だが、映画の内容も正にそんな感じだ。
パティンソン演じる主人公は、窮地に追い込まれ弟と一緒に強盗をしてしまう。もちろん犯罪者なわけだが、観客としては彼らになんとか逃げきってもらいたいとハラハラしながら観続ける作品。NYのクイーンズの最下層を生きるふたりのスリリングな一夜を描いた今作は、アメリカではすでに公開済み。パティンソンの演技が認められたのみならず、シドニー・ルメットの『狼たちの午後』や、マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』などの傑作とも比べられるような高評価をされている。逃亡者の心理をリアルに描いた作品なのだ。
予告編を観て気付くのは、あのイケメンのロバート・パティンソンがその美貌を”台無し”にしてこの役に挑んでいること。ご存知のように、『トワイライト』シリーズで、世界的な”アイドル”となってしまった彼は、その後、デヴィッド・クローネンバーグの作品に出演するなど、そのイメージからなんとか脱皮しようと試行錯誤を繰り返していた。例えば、かつてはジョニー・デップも辿った道だし、『トワイライト』で共演したクリステン・スチュワートも、または『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフも同じような選択をしているように思う。ボーイバンドからその後ソロになって、本格的なシンガーとして認めてもらいたいと思う構造とも似ている。
そして、彼の試行錯誤の成果と言えるのが、この作品なのだ。
NYで上映された時に、ジョシュ&ベニー・サフディ兄弟監督とパティンソンが短いQ+Aを行ったのだが、そこでも、彼がいかに役になりきるのかが大きなポイントだったかを語っていた。ベニー曰く「撮影が始まる前にロブとロケハンをしていたら、どんなに寂れた道でも、誰かが彼に気付いて携帯で写真を撮り始めた。その瞬間彼の顔を見ると戦地にでも来たようなモードになっていた」。
ロバートは、「この作品の前に『リメンバー・ミー』でNYで撮影した時は、気が狂ったような騒ぎだったんだ。そうなると最悪で、自意識の牢屋に閉じ込めれたようになり、自分の演技のみならず、映画全体を台無しにしてしまう。だけど、この映画の撮影の時はほとんど誰にも気付かれなかったんだ。それは顔に油を付けて汚い格好をしていたのも大きかったと思うし、役になりきって気配を消していたというのも大きかったと思う。撮影全体がそんな感じだったんだ」。
ちなみに、パティンソンは、この役のためにダイエットも行い「とにかくツナだけを食べた。僕は痩せようとする時はツナだけ食べるんだ。だから部屋中が魚クサくなっていた(笑)」
また監督がOPNにサントラをお願いしたのは、元々彼の『Betrayed in the Octagon』に収録された“Behind the Bank”が大好きだったからだという。
「The Fader」誌のインタビューに答えたOPNことダニエル・ロパティンは、「監督とこのサントラはシーンによって形を変えていく生き物のように作りたいと思った」と語っている。「シンセサイザーを使ったサントラが映画シーンにおいてどんな意味を持ってきたかを監督と話した。もちろん過去の傑作などの名前があったけど、僕らはそのオマージュをするだけではなくて、ここではさらに深いところに辿り着きたかった」と。
実はベニー・サフディが、パティンソンの弟役を演じている。サフディー兄弟監督にとっても、大ブレイク作となった。
映画の詳しい公開情報に付いては以下を参照。
http://www.finefilms.co.jp/goodtime/