2月14日にフロリダの高校で銃乱射が起き17人が亡くなるという悲劇が起きたが、いまだラスベガスで起きた銃乱射や、同じくフロリダのクラブで起きた銃乱射事件の記憶に新しいまままなのに、ほとんど日常茶飯事というレベルでアメリカで銃乱射が起きている。
それを受けて、市民が大反発。まず、NRAから資金を受け取っているフロリダ州下院議員のマルク・ルビオに抗議して、なんと映画『スリー・ビルボード』に影響された看板が3つ掲げられた。
「学校で虐殺されたのに」「銃規制がまだないとは?」「どういうことだマルク・ルビオ?」と書かれている。
映画の中では、娘がレイプされ殺されたのに、まだ犯人を見つけれないでいる警察署長への抗議のメッセージを母親が掲げるのだ。
「レイプされ殺されたのに」「まだ犯人が見つかってない?」「どうことだウィロビー署長?」と。
実は監督のマーティン・マクドナーは、20年くらい前にアメリカの田舎街を旅している時に実際、誰かが警察への怒りを込めた悲痛な看板を掲げていたのを見たそうだ。それで、一体どんな怒りと悲しみがあったらあそこまでのことをするのだろう、と考え始めたことがこの映画を作るきっかけになったと語っていた。この映画は、トロント映画祭で観客賞を受賞して以来、現在アカデミー賞の最有力候補で、監督、女優のフランシス・マクドーマンドのインタビューが『CUT』に掲載中なのでぜひ読んで欲しい。
この映画が高く評価された理由の一つは、あまりに現在起きていることを映し出しているから、というものだったのだが、今回のフロリダに掲げられた看板が悲しいかな、それを実証してしまった。
映画は今日本でも公開中なのでぜひ観て欲しい。予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=kcvqyvlh09M
「Washington Post」紙の調べるによると、1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件以来今ままで、少なくとも170校の学校で、銃乱射が起きていて、銃乱射を体験した生徒達は15万人にものぼるということ。
オバマ大統領は違ったが、トランプ政権では銃乱射が起きる度に、「今は亡くなった人たちに祈りを捧げる時であり、銃規制について話す時期ではない」と銃規制についての論議を避け続けてきた。そして今回、それにもう我慢をしきれなくなったフロリダの高校生がなんと立ち上がり、3月24日に、自分たちの命を守るためのプロテスト”March for Our Lives"を行うことになったのだ。
そのための声明文を読み上がるスピーチをしたり、各局のインタビューに答えているのだけど、その言葉があまりに明確で、しかも筋が通っているので、感動してしまう。基本的には政治家がNRAにお金をもらっていて銃規制をしてくれないことにより、僕ら子供たちがその代償として命を失っている、ことへの反発と抗議なのだ。
例えば、このインタビューでは「ルビオ議員、僕らの仕事はあなたにどうやって僕らの命を守るのかお願いすることではありません。僕らのやるべきことは、学校に行き、勉強することです。銃で撃たれることではありません。どうすればこんなことが起きないのか考えるのは、あなたの仕事なのです。残念ながらあなたが選挙で選ばれたわけですから、あなたの仕事は僕らを守ることなのです。僕らの血はあなたの手にかかっているのです」と訴えている。
さらに、「議会にいる人たちへのメッセージは一つです。僕らを支持するのか、しないのか、だけです。大人がごまかしている間に僕らが命を失っているのですから」「3月24日に、アメリカの大都市で僕らはマーチを行います。そこには僕らの命がかかっています。この悲劇から何かしらの正義をもたらそうとしているのです。僕らは命の為にお願いしているのです」「そしてNRAから資金を受け取り、その被害を僕らが被っていることに対して、政治家に恥を知れと訴えたいのです」
と。
「僕らを支持するのかしないのかしかない」という部分は政治のスピーチではよく使われるが、最近ではエミネムのフリースタイル“The Storm”にも登場した。「俺を支持するのか、しないのかしかない」とトランプを選ぶか自分を選ぶしかないとラップしていた。
また最も話題となったのは、以下の同じ高校の生徒でありプロテストを主催するメンバーの一人のスピーチで、そこでも涙と怒りで、トランプ政権がいかにNRAから資金を受け取り、精神的に問題があっても銃を買えるように法律を変えたのか、など具体的に明確に批判している。金より子供達の命を大事にしろ。大人は何もしてくれないから、自分たちで守らないといけないと。今回の高校の事件を最後に、絶対にこれ以上子供が殺される事件は起きてはならないと訴えている。
https://twitter.com/CNN/status/964949743683108865
彼らが行うマーチについては、早速ジャスティン・ビーバーが支持のツイートをしている。「昨日は話せて良かった。君たちの勇気は素晴らしい。僕も支援する」と。
「Black Lives Matter」や、#metoo運動など、トランプ政権になったことで、より反発が高まり、市民が自分たちで立ち上がり物事を動かさないといけないという空気が充満している。ここに来て何も変わらなかった銃規制を被害者である子供達が変えることになるかもしれないとは。水曜日に、トランプと議員が高校生の質問に答える集会を行うことになっている。プロテストを行う高校生たちは、大人たちの誤魔化す方はしっかりと把握しているので、どのように指摘すればいいのかもう練習しているとまで言っていた。
トム・モレロがプロフェッツ・オブ・レイジのインタビューで言っていたことを思い出す。「世界を変えたったから、自分で立ち上がって変えるしかない。誰かがやってくれると思って待つな」と。大人が何もしてくれないから、子供たちが命を守るために自分で立ち上がるところまで来ている今のアメリカ。