カニエ・ウェストがアフリカン・アメリカンに民主党支持を止めようと訴えるキャンペーン"Blexit"=Black ExitのTシャツをデザインする。


カニエ・ウェストがトランプ支持者であり、トランプとホワイトハウスで会談。「愛してる」と言ってハグまでしたのは誰もが知るところだが、なんと今度は、アフリカン・アメリカンに民主党支持から”抜け出す”ように訴えるキャンペーン”Blexit" =Black ExitのTシャツをデザインしたということ。Page Six がレポートしている。
https://pagesix.com/2018/10/27/kanye-west-designed-t-shirts-urging-black-people-to-bail-on-democrats/

これはTurning Point USAという団体がYoung Black Leadership Summitという集会をワシントンDCで行った際、コミュニケーション・ディレクターであり、カニエが以前から支持していたCandance Owenが発表したもの。彼女は、カニエは、今日ここには来られないけど、「スピリット」として存在しているとコメント。
「Blexitはルネサンスであり、このロゴや色は、私の友人でありスーパーヒーローであるカニエ・ウェストが作ってくれました」「カニエ・ウェストがアメリカにおいて最も勇気のあるステップを踏み出してくれたおかげで、我々は今必要とされている会話をすることができるようになったのです」

Tシャツやキャップには、"Blexit”や、"We Free"と書かれている。トム・ヨークにまた笑われないか心配だ。
https://shopblexit.com/


カニエは、10月11日にトランプと会談した後も、いくつものヘッドラインを飾っている。いくつか箇条書きで紹介。

1)ウガンダに行きレコーディングの模様を生中継。


2)ウガンダの大統領に会い、Yeezyを渡す。


ウガンダの観光とアートをいかに広めるかの話し合い→各所から非難される。Yoweri Museveniは、32年間大統領であり、国の政策に反対する活動家は拘束し、自由を奪い、拷問することで知られているから。またゲイの権利を奪う法律を2014年一方的に可決したから。ミュージシャンであり、活動家であるBobi Wineが拘束、拷問されていたため、デーモン・アルバーンや、クリス・マーティンなどが署名を集めていた。

3)ウガンダの孤児院にYeezyを寄付する。
https://twitter.com/ComplexSneakers/status/1052196806585667584

4)「俺の音楽は世界一だ。俺は現在最高のアーティストだ。なぜなら、俺、というよりも、俺達というのがふさわしい。なぜなら、俺には、フェラ(・クティ)、(ボブ・)マーレー、トゥパックのスピリットが宿っているから」と発言→フェラ・クティの息子さんから全否定される。「クティ・ファミリーを代表して言わせてもらいます。Olufela Anikulapo Kutiのスピリットは、カニエ・ウェスト周辺には全くおりません」
https://www.instagram.com/p/Bo6huuMlLjz/?hl=en

5)NYで行われる予定だったメンタルヘルスに関する対談を、対談を企画した本人がキャンセル。「今のカニエ・ウェストと対談しても生産性のある会話ができると思えないから」。実は私もチケットを買っていて、トランプとの会談の後、これはとんでもないことになりそうとは思っていたのだが、案の定キャンセルされた。カニエの関係者はほっとしていたと企画者が言っていた。


6)チャンス・ザ・ラッパーが支持するシカゴ市長候補者の資金負債全額$73,000を寄付する。


7)カニエのKid Cudiとのコラボアルバム『Kids See Ghosts』から”Freee (Ghost Town, Pt. 2)"がグラミー賞のロック・ソング、ロック・パフォーマンス部門で提出された。カニエは、以前自分が賞を獲らなかったのでグラミーはボイコットすると言っていた。このグラミー賞提出は、レーベルがやったのか、彼の気も変わったのか不明。


またカニエは、アルバム5枚のプロデューサーでもあるので、プロデューサーとしてもグラミー賞に提出されている。


カニエのトランプとの会談の後、『それでも夜は明ける』で黒人監督として初めてオスカーを獲ったスティーブ・マックーンがカニエの行動を分析していた。マックイーンは、カニエのMV”All Day/I Feel That "の監督もしている。


その中で、監督は「カニエは、自由な黒人になりたいのだと思う」と語っている。

「僕は、カニエをある意味理解できていると思う。ただ、みんな人を理解したと思っていても、できていないことも多いわけだけど。恐らく、カニエは、自由な黒人になりたいのだと思う。彼は完璧に自由になりたいんだと思う。自由に、自由に、自由になりたいんだと思う」。「彼にとって自由であるということは、彼の信じる概念があること、または、大多数の人の意見とは違うことを選ぶこと、なんだと思う。つまり、自分がやりたいことはなんでもできるんだ、と世界に示すことで、彼は精神的な奴隷から、束縛から自由なんだと言おうとしているんだと思う」

マックイーン監督は、カニエがTMZに行き、トランプ支持を表明し、奴隷制度が選択だと言ったのを見てすぐに電話したそう。「彼が大好きだから」と。ただ、彼の発言に「失望したどころではない」と語っている。

個人的にも、カニエは自分は人の言いなりにならない、自由なんだと言いたいのだろうなあということは理解できる。しかし、そのために使った例とそのタイミングがあまりに間違いすぎていると思う。トランプを選んだ理由も、実はよく分かるのだが、語り出すと長くなるので今回は省略。

新作『Yandhi』は11月23日に発売。これだけの反発エネルギーを浴びて、とんでもない傑作を生み出している可能性もある。
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