オスカーのノミネーションが発表された。全リストは以下のリンクより。
https://oscar.go.com/news/nominations/oscar-nominations-2020-list-nominees-by-category
『ジョーカー』が作品賞、監督賞、主演男優賞など主要部門を含む11部門で最多ノミネートされた。しかし『アイリッシュマン』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、『1917 命をかけた伝令』がそれに続く10部門でノミネーションと予想通りかなり接戦の内容となった。
作品賞のノミネーションは以下の通り。
以下いくつか雑感。
1)祝! メイク・アップ&ヘアスタイリング賞でカズ・ヒロ氏が再ノミネート
カズ・ヒロ(辻一弘から改名)氏は、ゲイリー・オールドマンがチャーチルを演じた『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でオスカーを授賞。その時、ゲイリーが「カズ・ヒロはすでに引退していたのに、彼にしかできないから無理やりお願いしてやってもらった」と言っていたのが印象的だった。
実は今回も『スキャンダル』のシャーリーズ・セロンがまったく同じことを言っていたのだ。彼女はアメリカでは有名なニュース・キャスターのメーガン・ケリーを演じている。あまりに知られた顔だったため、彼にお願いしないとこの役が演じられないと思い、再び引退したいと思っているところを無理やりやってもらったと言っていた。
結果は驚くほどそっくりで、メーガン・ケリー本人が、自分の息子が劇場で映画のポスターを見て混乱していたとインスタにポストしていたほどだ。
『スキャンダル』の予告編はこちら。日本公開は2月21日!
https://youtu.be/NZT00LcNAEg
2)オリジナル・ソング部門のノミネーション
『ロケットマン』のエルトン・ジョンや、『トイ・ストーリー4』のランディ・ニューマンがノミネートされている。
『ライオン・キング』のビヨンセがノミネートされなかったのは驚き。『キャッツ』でテイラー・スウィフトも絶対に狙っていたはずだが、残念ながらノミネートされなかった。
また、ランディ・ニューマンは『マリッジ・ストーリー』ではオリジナル・スコアにもノミネートされている。
ランディ・ニューマンと言えば、去年はチャンス・ザ・ラッパーの最新作の中でも感動的な曲だった“5 Year Plan”でコラボしていた。13歳の時からランディ・ニューマンのファンだったチャンスだが、彼に電話したことでコラボが実現したそう。チャンスのお父さんは、彼が子供の頃からランディ・ニューマンを聴かせていたという。
3)Netflixが最多ノミネート
今年の大きな特徴は、『アイリッシュマン』、『マリッジ・ストーリー』、『2人のローマ教皇』とNetflix製作の作品が数多くノミネートされたこと。計24のノミネーションはどのスタジオよりも多く、初めて最多ノミネートを果たした。
去年は、Netflix作では『ローマ』が多くノミネーションされたが、今年のオスカーの見所のひとつは、果たしてNetflixの作品が初めて作品賞を獲るのかということになる。ハリウッドとストリーミングサービスというのは非常に複雑な関係にあるため、それが焦点のひとつとなる。
ちなみに、『アイリッシュマン』は大傑作だが、個人的に私が友人や知り合いに調査したところ、Netflixで見た人は100%途中で挫折している。3時間半あるこの作品、劇場で観ると1秒たりとも無駄のない最も映画的な映画、絶対に劇場で観ないとダメ、というところもまたジレンマだ。日本でも劇場で公開しているので、是非足を運んで欲しい!
だって、スコセッシで、アル・パチーノで、デニーロで、ジョー・ペシで、ギャング映画ですよ! これを劇場で観ないでどうする!?
予告編はこちら。
https://youtu.be/05uH8pj1B1E
4)再び白すぎる&女性監督無視の結果に大ブーイング
イギリスのBAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)のノミネーションで俳優部門が全員白人であったため、人種差別だと大批判されたばかりだが、オスカーも大きく変わらない。アントニオ・バンデラスが『ペイン・アンド・グローリー』でノミネートされたのは嬉しい驚き。
だが、主演女優部門では『ハリエット』で、シンシア・エリヴォがノミネートされた他は全員白人。白人以外だからノミネートすべきというのではなく、今年は、『ハスラーズ』のジェニファー・ロペスから、『フェアウェル』のオークワフィナ、『アス』のルピタ・ニョンゴなど素晴らしい演技があったのに、ノミネートされなかったことへの怒りだ。「白すぎるオスカー」のハッシュタグが復活している。
また、ゴールデングローブで監督賞に女性監督が1人もいなかったことが大批判されたのに、グレタ・ガーウィグが再びノミネートされなず大ブーイングだ。NYタイムズはじめ大きく批判されている。
グラミー賞は、ユースと女性の活躍が認められたノミネートとなったが、白人と男性が有利なノミネーションばかりを繰り返していると現実を反映していないことになるので、観客や視聴者はどんどん減るのみ。オスカーは彼らが必要だということに、観客よりも気付いていないのだ。
『CUT』最新号でオスカー予想&オスカー作品のインタビューなどを掲載しているので、是非読んでください。