ザ・ローリング・ストーンズが出演予定だった米フェスがキャンセルに。スティーヴィー・ニックスも全フェス出演をキャンセル。ボナルーは入場規定変更。デルタ変種株拡大で再び揺れる米フェス事情

pic by Bonnaroo

先日、ロラパルーザに行ったことを報告したばかりだが、ここに来てデルタ変種株が急速に拡大しているため、アメリカのフェス開催が揺れに揺れ動いている。

1)ザ・ローリング・ストーンズが出演予定だった『ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバル』がキャンセルに

10月8日~17日に開催予定だったが、キャンセルと発表された。元々春に開催されていたフェスで、来年の春4月29日から5月8日に延期して開催される。

今年のフェスには、超大物ザ・ローリング・ストーンズの出演が決定していた他、スティーヴィー・ニックス、フー・ファイターズ、リゾ、H.E.R.などそうそうたるメンツの出演が決まっていた。



開催も10月とまだ時間はあるように思うが、先陣を切って今年の開催を断念した理由は、実はルイジアナ州は、人口の割合で比べると新患者数が全米で上位5番に入る多さなのだ。さらに州の全人口のうちワクチン接種が2回とも終わっている人の割合はわずか37.7%で、全米で下から5番目。しかも、ニューオーリンズ周辺の感染者数が最悪となっている。デルタ変種株はワクチンを接種していないと悪化しやすいことが分かっているため、州からの要請でこの決断となった。何しろ、ジャズ・フェスには毎年50万人も参加するのだ。


「現在のニューオーリンズやその周辺のコロナ感染者数の上昇と公衆衛生緊急事態を考慮した結果、私たちは残念ながら、10月8日~17日に開催予定だった今年のニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバルを計画通り実施できなくなったと発表しなくてはいけません」


「皆さん、どうか公衆衛生当局によるガイダンスに従ってください。そうすれば来年、ジャズ・フェスの喜びをみんなでまたすぐに体験できるはずです」


州知事も「我々の現状の規定では、ルイジアナ州で起きているコロナ第4波を乗り切るのに十分ではないことは、明らかだ。今全米の人たちがルイジアナ州の行方に注目している」と記者会見で語ったばかりだった。

2)9月2日~5日に開催のボナルー・フェスは、入場規定を厳しくする

一方、ジャズ・フェスより早い9月2日~5日に開催の『ボナルー・ミュージック&アーツ・フェスティバル』は、ジャズ・フェスがキャンセルされると発表された後、引き続き開催を予定しているが、入場規定を厳しくすると発表した。



「観客とスタッフの安全は、我々が最優先することです。そのため2021年のボナルーに参加するためには、ワクチン接種済みか、コロナの検査結果が陰性であることが必須となります。

ボナルーは、ワクチン接種をより強く奨励します。ワクチン接種済で入場する方は、モデルナ、ファイザーの2回目の接種、ジョンソン&ジョンソンの1回の接種を、8月19日までに行っていなくてはいけません。

また、ワクチン接種をせずにコロナ陰性の検査結果を提出される方は、開催までの72時間以内で検査をしなくてはいけません。また、ワクチン接種せずに来る方は、会場内では常にマスクの着用をお願いします」


ボナルーは、ナッシュビルから車で2時間弱の広大な農場で行われる。観客は1日約10万人。

テネシー州の新患者数も、人口比で見るとルイジアナ州と変わらない上位5番以内の多さだ。ワクチン接種率も39.7%と下から10位。なのでかなり悪い位置にいるといっていい。

3)スティーヴィー・ニックスはデルタ変種株を懸念して、今年出演予定だった5つのフェスを全てキャンセル

スティーヴィー・ニックスは、今年5つのフェスに出演する予定だったが、全てキャンセルすると発表した。


「現在非常に困難な時代にあり、困難な決断をする必要があると思います。
私はみんなに安全でいて欲しいし、健康でいて欲しいのです。
そのため、コロナの感染者数の増加は我々誰もが懸念すべきことだと思います。
私はワクチン接種はしていますが、この年齢でもあり、非常に注意深くもあります。
そのため、2021年に出演予定だった5つのフェスの出演をすべてキャンセルします。
歌うことと、パフォーマンスすることは、私の人生の全てです。
そして、私が最優先にしているのは、私が健康であり続けることです。
そうすればこれからの10年、さらにその先も、歌い続けられるからです。
ファンの皆さんががっかりするのが分かるので、私としても非常に辛いです。
だけど、より明るい2022年を楽しみにしましょう」


スティーヴィー・ニックスが出演する予定だったフェスは以下の5つ。

9月3日~5日 コロラド州 Jazz Aspen Festival (代わりにジミー・バフェットが出演。ワクチンまたは陰性の結果提示が必須に)


9月3日~5日 カリフォルニア州 Bottle Rock Napa Valley (代わりにクリス・ステイプルトンが出演)


10月1日~3日&10月8日~10日 テキサス州 Austin City Limits Music Festival (代わりにデュラン・デュランが出演)


10月22日~24日 ジョージア州 Shaky Knees (代わりにフー・ファイターズが出演)



この4つのフェスと、キャンセルされたニューオーリンズのジャズ・フェスだ。

4)リンプ・ビズキットもツアーをキャンセル

ロラパルーザに出演したばかりのリンプ・ビズキットも8月のツアーをキャンセルした。


ウェス・ボーランドが、コロナ陽性になったという噂が流れたので、これをフレッド・ダーストが否定。「フェス・ボーランドはコロナ陽性になっていない」と言った上で、「みんなの健康と安全が第一で、現在のツアーのやり方ではコロナへの安全対策が十分ではないから」と理由を発表した。

5)NY市は全米に先がけて、ブロードウェイ、ライブ、映画、レストラン、ジムなど屋内での活動はワクチン接種が義務化

NY市は9月13日から、屋内での活動、ブロードウェイ、ライブ、映画などのエンターテインメントから、レストラン、ジムなど、そこで働く人たちも、顧客も、ワクチンを少なくとも1回は接種した証明書を見せることが義務化される。8月16日からその準備に入る。12歳以下は義務ではない。


デルタ変種株の急速な拡大を受けてのもので、NY市もNY州も、ワクチン接種を証明するためのアプリが既にある。ワクチン接種の義務化には当然賛否両論あるが、再びレストランなどを閉鎖しないための、これが現時点の最善の策とみなされている。

6)NY市はセントラル・パークの野外コンサート・シリーズもワクチン接種義務化。検査陰性では入場不可

決まりが厳しくなってきた。ニュースを見ているとコロナの報道が緊迫化してるのでそれに比例していると言えるが、なんとNYのセントラル・パークで行われている夏のコンサート・シリーズ「サマー・ステージ」でもワクチン接種が必須と今発表された。コロナの検査が陰性では入れないと。もちろん屋外だが、なかなか厳しい。



今後も感染者数により、フェスの開催などは変わり続けるのだと思う。

ちなみに、私もこの間ロラパルーザに行ったのでその後も感染について注意していて、フェスから帰って来て1週間経ったところで検査をした。現時点では陰性だった。また1週間後に検査したいと思う。

皆さんも引き続きお気を付けて。



『ロッキング・オン』最新号のご購入は、以下のリンク先より。


中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事